戯言3-9 ページ10
「まさか、あんなのを悪事だなんて言ってるわけじゃないよね?」
それだったら拍子抜けもいい所だ。大泥棒でそれ以上に酷いことをしている癖に…まさかそんな訳ないよね?
「あれはむしろいい事だ。僕みたいにあのゲーム機で傷つく少年少女がこの先現れるなんて考えたら…いても立っても居られなくてね。」
なんて良いことをしたんだろう。これは後世に語り継がれるほどの良い行いだ。大したやつだよ神代A!
「そ、そう…」
「頭おかしいんじゃないの?」
ミラ王女は思ったことを言う女の子だ。少し園子ちゃんに似ている。
蘭ちゃんの顔をした園子ちゃんか…中々悪くない。
そんなことを思いながら雑誌に目を落とす。『特集!今度の女の子は凄いぞ!』とデカデカと書かれたページをワクワクして捲る。
「げっ…」
出てきた女の子はどことなく工藤君に似ていた。つり上がった眉、髪は長く、気の強そうな女。普通に見たら美人だとは思う。
折角忘れていたというのに。うんざりして雑誌を閉じた。することが無くなると俄然気になるのは携帯だ。
電源を切ってからというもの大人しくなったが、切る前の状態を考えると電源を入れる気にならない。
きっと彼は怒っている。そんなことは考えるまでもなく明白だった。
あの出来事からより一層彼は酷くなった。僕がどんなやつかを知らしめて離れさせようと企てても、どれだけ酷いことをしても、それを繰り返す度工藤君は僕に対して過保護になって行った。
僕が簡単に人としての一線を超えてしまうから、越えさせないように監視をする日々。この機会に君も一旦休んでみればいいのに。
空の旅は圧巻だ。窓から見える世界は鳥ならばいつでも見ることができるのだろう。
ね、工藤君。君もそう思うだろう?
飛行機の車輪の中で、きっと酸欠で倒れてしまっている彼。愛しい彼の姿を思い浮かべながら、僕はこの景色を君の代わりに目に焼き付けた。
✮
「さ、着いたわよ。」
着く頃には外は真っ暗だった。ひとたび降りてしまえば、ここはもう日本では無い。
「いい国だね。」
「まだ来たばかりでしょ。」
うん、確かに。
降りてもない時点で何一つこの国のことを理解していない。ま、外国に行ってみたいってだけだったから半ば目的は達成したようなものだ。
別にこのまま帰ってもいいのだが、それでは面白味がない。どの道帰る手段も持ち合わせていないわけだし、事件が終わるまではこの国を堪能するのも悪くないかもしれない。
247人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
イロハ(プロフ) - セイさん» セイ様へ、長い間お待たせてすみません。ですが覚えてくださった方がいてくれてとても嬉しいです。コメントまでして下さって、もっともっと精進しつつ続けていきたいと思いました。これからもよろしくお願いします*ˊᵕˋ* (1月10日 11時) (レス) @page16 id: 7c23aeb2f0 (このIDを非表示/違反報告)
セイ(プロフ) - 続編ありがとうございます。更新通知が来て舞いあがっちゃいました。また神代君の戯言が見られて嬉しいです。欠けた心を持つ神代君と彼に振り回される主人公達が大好きです。次の更新も楽しみにお待ちしております。 (1月10日 8時) (レス) id: ec218c72f0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:イロハ | 作成日時:2023年12月24日 19時