戯言3-19 ページ20
黒いスーツに特徴的な髭。この男が次元大介だということはすぐに分かった。
「日本からこの国まで誘拐されて、ついさっきコナン君に助けられたんだ。」
「そんな説明で分かるかっ!!」
事実を端的に伝えたのだが、突拍子もない話に上手く呑み込めていないみたいだ。
時間も惜しいため僕達は移動しながら話を続ける。漫画の登場人物が目の前のいる事実に慣れては来ていたが、別の漫画ともなるとやはり違和感が残る。
「う、嘘みたいな話だけど本当のことなんだよ!」
コナン君が焦ったようにフォローする。ついでに僕とコナン君が知り合いであることも伝えた。
「…とゆーと、その誘拐犯とやらはどうなったんだ?」
当然の疑問である。
「置いてきちゃった。」
誘拐とは……?
神代Aが関わることで誘拐の概念が変わる。いやそもそもこの男に概念など存在するのであろうか。
長い溜息を着いたあと次元大介は思考をめぐらせるように上を向いた。
彼と同じようにAも思考をめぐらせる。だがしかし、次元とは別の思考内容だ。
(今頃不二子ちゃん達はどうしているだろうか。まぁ僕がいなくなったところで不審人物がいなくなっただけだろう。)
初めから何も無かったように、物語は元の鞘に収まる。
「わかった。じゃあ質問を変えよう。お前さんは、誰に、何のために、どうやって誘拐されたんだ?」
隣を歩いているコナン君も気になるのかAを鋭い目で見詰める。
確かに誘拐されただなんて普通に考えれば大事件だ。あまりにも身近に事件が多すぎて感覚が麻痺してくる。
そんなことを思いながらゆっくりと説明するように言う。
「僕が、無意味に、誘拐されるように、仕向けた。」
2人の顔が更に疑問に歪んだ。おいおい、さっきから僕は本当のことしか言ってないってのに酷いな。
「なんだよ。まるで、普段嘘しか言わない奴が急に突拍子もないことを言い出して、嘘だろうと決めつければいいものの、突拍子もない行動もする奴だから本当かもしれないってあれこれ悩んでるみてーな反応してさ。」
「そこまで分かってんならどうにかしろよ…」
呆れたように呟く。次元に関しては未だ驚きを隠せない、といった風貌だ。
最初はこうやって毎回驚いてくれていたというのに彼もつまらなくなったものだ。これが俗に言うマンネリというやつか。
なんて、ズレにズレまくったAの結論は誰にも分からないまま終わった。
相変わらず隣でぶつくさと文句を言い続ける小さな彼。そんな中でも、こういう時の彼の横顔は見ていて飽きない。これに関しては口が裂けても言えないけれど。
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イロハ(プロフ) - セイさん» セイ様へ、長い間お待たせてすみません。ですが覚えてくださった方がいてくれてとても嬉しいです。コメントまでして下さって、もっともっと精進しつつ続けていきたいと思いました。これからもよろしくお願いします*ˊᵕˋ* (1月10日 11時) (レス) @page16 id: 7c23aeb2f0 (このIDを非表示/違反報告)
セイ(プロフ) - 続編ありがとうございます。更新通知が来て舞いあがっちゃいました。また神代君の戯言が見られて嬉しいです。欠けた心を持つ神代君と彼に振り回される主人公達が大好きです。次の更新も楽しみにお待ちしております。 (1月10日 8時) (レス) id: ec218c72f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イロハ | 作成日時:2023年12月24日 19時