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戯言3-15 ページ16

いるはずのない彼の姿に驚きを隠せない。


「や、やぁコナン君…元気そうで、何よりだよ…。」


ゼェゼェと肩で息をするコナン君。走ってきたのだろうか。というか、なんで僕の居場所が分かったんだろう。


「なにが…元気そうでなによりだァァァァ!!!!!」



キーーンと耳に突き刺さる。咄嗟に耳を塞いだ僕に近づいてぺたぺたと体を触りまくる。


「な、何してるんだよ!?」


「怪我がねぇか確認してんだよ。って、おめーまたこんなに仕込んで、危ねーからやめろって言っただろ!!」


「あっ、ちょ…!」


小さくて冷たい手がお腹に触れる。反射的にビクッと体が跳ねた。



「…悪かったよ。」


急に弱々しく彼はそう呟いた。人の服の中に手を突っ込みながら一体何の話をしているんだ。


「その、怒ってるんだろ…?俺がなんの根拠もなくおめーを疑ったこと…」



怒られるのは僕の方だと思っていたのに。しゅんとした顔をした彼は気まずそうにこちらを見上げてくる。


僕が彼の連絡を無視したから、彼はきっと考えたのだろう。日頃の行いから、不二子ちゃんに誘拐されたのは僕が何かよからぬ事を企んでいたからだって決めつけてしまったせいかもって。なんで無視するのか、その理由は自分のせいだったのかもって。


別にそんな大した理由なんか無いのに。


僕を見つめる眼差しは不安を孕んでいた。そんなに、ずーっと僕のことを思ってくれてたんだ。


「んっ!?」


しゃがんで彼の小さな唇に自分の唇を重ねた。


「な、なにしてっ」


軽いキスだ。もっと深い関係を持った事があるが、実を言うとあれ以来特に何もしていない。


何度も何度も頻繁に工藤君の姿に戻るわけにいかないし、僕の方もそれはノーセンキューだ。


「僕1人でも平気だった。」


いつもヒロインのピンチに駆けつけるヒーロー。でも僕はヒロインじゃないし。


「態々この路地裏に来たのだって、こいつらからお金を盗ってやろうって思ってただけ。」


その為にお店を回りながら物色していたのだ。君が来なくても十分に対応出来てた。だから…



「……殺すつもりだったのか?」


しんっと当たりが静かになった気がした。


そんなことはしないよ。だって、そんなことをすれば楽しい旅行が台無しじゃないか。


喉元まででかかった言葉を飲み込む。彼が望む言葉はきっとこれじゃない気がする。



「悪い。Aは別に俺に守られる程弱くないのは分かってる。けど、俺の方が…心配なんだよ。」


いつになったら彼はそんな無駄な心配をしなくて済むんだろう。いくら考えても分かりっこない。分かるわけが無いのに。

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イロハ(プロフ) - セイさん» セイ様へ、長い間お待たせてすみません。ですが覚えてくださった方がいてくれてとても嬉しいです。コメントまでして下さって、もっともっと精進しつつ続けていきたいと思いました。これからもよろしくお願いします*ˊᵕˋ* (1月10日 11時) (レス) @page16 id: 7c23aeb2f0 (このIDを非表示/違反報告)
セイ(プロフ) - 続編ありがとうございます。更新通知が来て舞いあがっちゃいました。また神代君の戯言が見られて嬉しいです。欠けた心を持つ神代君と彼に振り回される主人公達が大好きです。次の更新も楽しみにお待ちしております。 (1月10日 8時) (レス) id: ec218c72f0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:イロハ | 作成日時:2023年12月24日 19時

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