39【番外編】 ページ39
『傑くん』
久しぶりに聞いた声。
振り返るとそこには、あの時と変わらぬままの彼女がいた。
いつもの笑顔で、いつもの声で、いつもの呼び方で。
あぁそうか、私は死んだのか。
乙骨との闘いに敗れた夏油は、五条の手によって殺された。
そして次に目を覚ましたときには、この真っ白な空間にいたわけだ。
ふと自分の手を見ると、服の袖口が目に入った。
夏油は学ランを着ていた。
「結局…私の中ではこの頃が1番だったということなのかな」
俯いて小さく呟くと、不意に抱きしめられた。
『お疲れ様、よく頑張りました。お姉さん褒めちゃうぞ!』
「ははっ…それはどうも」
しばらくわしゃわしゃと撫でられた。
撫でられながら、夏油はAに対しての文句をたれる。
「だいたい君はどうしてもっと早く私に年齢を打ち明けなかったんだ…」
『レディに歳を聞くとかサイテー!サバ読んだっていいじゃんか!』
「それとこれとでは訳が違うだろう…!第一君は何も言ってくれない…!小学生みたいな態度とったかと思えば、急に大人びた顔をする…!…もしあのことを相談してくれていたら…!」
そこまで言って彼女の顔を見ると、眉を下げて笑っていた。
『ごめんね、でも、私にだってプライドがあるんだ。君の前でカッコつけたいっていうプライドが』
そう言って目を細めて笑った彼女。
その笑顔を見ていると、何だかどうでも良くなった。
『私さ、死んだこと後悔してないよ。君と出会えただけで、私の人生は最高だったって胸張って言えるよ』
「……私もだよ」
『えっ』
「君と出会えて、良かったよ」
『あのッ…ちょっ__』
重なる唇。
会えなかった10年間がこのたった数秒で埋まっていく。
Aはそっと、目を閉じた。
✱
Aに案内され、白い空間を歩いているとき、Aは言った。
『いきなりすぎるよ傑くん…この女タラシめ…』
聞き覚えのあるセリフに、夏油は苦笑いする。
そしてしばらく歩き進めたところで、夏油は立ち止まる。
「…A」
『なぁに』
振り返ったAの手を取り、夏油は言った。
「私の、彼女になってはくれないかな」
『…!…ホント…ずるいね…傑くん…』
Aは優しくはにかむと、一言、
『喜んで…!』
彼と一緒ならば、地獄だって悪くない。
2人は指を絡めて、遠くへ消えていった。
Fin
貴女の彼氏or彼女は??
新田新
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結衣(プロフ) - コメントありがとうございます。とっても元気が出ました!更新頑張りますね!! (3月31日 19時) (レス) id: df2d4255b1 (このIDを非表示/違反報告)
えす - 続きおねがいします!!! (3月31日 18時) (レス) @page30 id: 93a8495db4 (このIDを非表示/違反報告)
結衣(プロフ) - 神様さん» お返事が遅れてしまいすみません。そう言っていただけて嬉しいです!頑張ります! (2月2日 16時) (レス) id: df2d4255b1 (このIDを非表示/違反報告)
神様 - 面白かったです!更新がんばってください! (1月21日 18時) (レス) @page24 id: 9fd19e5354 (このIDを非表示/違反報告)
神様 - ありがとうございます(≧▽≦)面白かったです! (1月17日 18時) (レス) @page22 id: 9fd19e5354 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:結衣 | 作成日時:2023年11月28日 19時