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「その人の名前はッ…!?」
「あ、いや…すいません、そこまで覚えてないです…」
「そうですよね、ありがとうございます」
礼を言うと、夏油は走った。
真冬だというのに、額に汗をびっしょりとかいて。
✱
Aの家の前に。
非常識なのは分かっている。
仮に先程の話が彼女のことならば、今家に押しかけるなんて間違っている。
それでも、確かめたかった。
安心したかった。
また、いつも通りケロッと笑って、"寝坊しちゃった!"と、言ってほしかった。
チャイムを押すが、返事は無い。
鍵は開いていた。
1歩、入ると、2階から声が聞こえる。
慌てて駆け上がり、少し開いているAの部屋のドアから中を見た。
だが、そこにいたのは蹲り、嗚咽を漏らして泣いている母親だけだった。
「……」
夏油は静かに、高専へと戻った。
✱
「お、傑もう帰ったのか?」
「てっきり朝帰りかと思った」
「硝子、それアウト」
ニヤニヤとそんな話をしてきた五条と家入。
しかし、夏油の表情を不審に思い、2人は黙った。
「……どうした?」
「…死んだんだ。Aは」
目を見開いた。
「は、なんで…」
「すまないが、詳しいことは知らない…」
そう言うと夏油は部屋へと戻っていく。
2人はその背中をただ見ていた。
✱
翌日、ニュースは大々的に取り上げられた。
"東京都立■■高校の生徒死亡"
"高校側は虐めを無視していた!?"
"AAさん、橋から転落、その真相は__?"
名門高校である■■高校は、炎上することとなった。
けれど、夏油にとってはそんなことどうでもよかった。
ただ、許せなかった。
Aを殺した人が、Aに悪意を向けていた人が、Aを助けなかった人が。
そして、自分自身が。
その悔しさは何日経っても変わらない。
祓う、取り込む、また祓う。
取り込む呪霊の味がいつもより酷い気がした。
✱
1週間後、夏油は再びAの家へと訪れた。
チャイムを鳴らすと、今度は母親が出てくる。
「はい」
「Aさんの友人の夏油です。Aさんに、渡したいものがあって来ました」
「…どうぞ」
ガチャリと鍵を開けてくれた母親は、ひどく痩せこけていた。
この一週間、ろくに食事が喉を通らなかったのだろう。
無理もない、たった一人の娘が死んでしまったのだから。
貴女の彼氏or彼女は??
新田新
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結衣(プロフ) - コメントありがとうございます。とっても元気が出ました!更新頑張りますね!! (3月31日 19時) (レス) id: df2d4255b1 (このIDを非表示/違反報告)
えす - 続きおねがいします!!! (3月31日 18時) (レス) @page30 id: 93a8495db4 (このIDを非表示/違反報告)
結衣(プロフ) - 神様さん» お返事が遅れてしまいすみません。そう言っていただけて嬉しいです!頑張ります! (2月2日 16時) (レス) id: df2d4255b1 (このIDを非表示/違反報告)
神様 - 面白かったです!更新がんばってください! (1月21日 18時) (レス) @page24 id: 9fd19e5354 (このIDを非表示/違反報告)
神様 - ありがとうございます(≧▽≦)面白かったです! (1月17日 18時) (レス) @page22 id: 9fd19e5354 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:結衣 | 作成日時:2023年11月28日 19時