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Aは立ち上がると、夏油のそばまで行く。
『デコピンする!』
「はい、どうぞ」
そう言って目を閉じた夏油。
ただ、いつまでたっても、額に痛みが走ることはなかった。
代わりに訪れたのは、ふにゅ、という柔らかい感触。
「…は」
『罰ゲームだよ、負けた傑くんが悪いの』
いやいやいやいや。
そういう問題じゃないだろう。
こんなものを罰ゲームと呼んでいいのかすら分からない。
世の男からすればこんなのは褒美以外のなんでもない。
そんなことを考えていると、いつの間にかAはその場から去っていた。
『悟くん!硝子ちゃん!』
「お、Aちゃんたちも終わった?」
『うん!今日は2人もありがと!』
「いーえー」
そのとき、夏油は額を抑えながらただ悶えていた。
✱
夏油たちに送ってもらい、家に入ると、まだ電気がついていた。
もう0時をまわっているというのに。
だが、リビングには誰もいない。
丁寧にサランラップで包まれた食事が用意されていた。
そしてその隣の置き手紙。
"Aちゃん。
先生ともお話してきました。提出物をしっかりと出していれば、日数が足りていなくても卒業させて頂けるそうです。
だから、進路のこと、どうか真剣に考えてください。
母はAちゃんにただ幸せになってもらいたいです。"
Aはその手紙を見ながら、ぼんやりと学校のことを思い出していた。
✱
AAは高校2年生のときから虐められている。
それは彼女が何でも出来てしまう人間だからだ。
ついでに言えば容姿端麗で常に笑顔なのだから、男子からも評判もかなり良かった。
つまり、妬みからくる苛立ちだろう。
最初は、軽く無視や友人同士で目配せされる程度だった。
それは次第にエスカレートし、上履きや制服を隠されたり、捨てられたり、ノートを切り刻まれたりと典型的な虐めへと変化していった。
もちろん先生も最初の方は対応していたが、だんだんと手に負えなくなり、ついには叱りつけてきた先生を、生徒がありもしないセクハラで訴えた。
学校側も完全にお手上げ状態。
いつからか、学校に行かなくなった。
日数が足りていないのに卒業させてくれるというのは、助けることができなかった生徒へのせめてもの償いといったところだろうか。
そのときから、Aは自分のことを、死んでもいい命だと認識するようになった。
貴女の彼氏or彼女は??
新田新
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結衣(プロフ) - コメントありがとうございます。とっても元気が出ました!更新頑張りますね!! (3月31日 19時) (レス) id: df2d4255b1 (このIDを非表示/違反報告)
えす - 続きおねがいします!!! (3月31日 18時) (レス) @page30 id: 93a8495db4 (このIDを非表示/違反報告)
結衣(プロフ) - 神様さん» お返事が遅れてしまいすみません。そう言っていただけて嬉しいです!頑張ります! (2月2日 16時) (レス) id: df2d4255b1 (このIDを非表示/違反報告)
神様 - 面白かったです!更新がんばってください! (1月21日 18時) (レス) @page24 id: 9fd19e5354 (このIDを非表示/違反報告)
神様 - ありがとうございます(≧▽≦)面白かったです! (1月17日 18時) (レス) @page22 id: 9fd19e5354 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:結衣 | 作成日時:2023年11月28日 19時