29 ページ29
『……ううん、君の言うとおりだと思うよ。私は所詮他人でしかない。それは紛れもない事実だよ、無神経なこと言ってごめんね』
「そんなこと…言わないでくれ…」
『……ごめん…?』
「なんで疑問形なんだ…」
"なんだか悪いことしたような気がして…"なんて笑って明るく振る舞う彼女。
そんなもので隠せているつもりなのだろうか。
少しだけ赤く充血していたAの目。
暗いから気づきずらいけれども、確かに涙の跡があった。
「すまない、A…」
夏油が抱きしめる力を強めると、何かを察したのか、先程までのおちゃらけた声がピタリと聞こえなくなった。
代わりに、夏油の背中へとまわされる、小さくて柔らかい手。
『謝らないでよ…来てくれてありがとう、傑くん』
Aのそんな暖かさを、ただただ感じていた。
数分して、夏油は携帯をチラリと確認した。
時刻は21:48を指している。
「A、門限は大丈夫かい?」
『えっと…うん、大丈夫だけど…』
「高専にいこう」
そう言われて、抱きしめられていた腕はいつの間にか、膝裏と肩に伸びていた。
そして軽々とAを抱き上げると、神社の階段を駆け下りていく。
『わっ、傑くんからこんなことしてくれるの珍しいね〜』
「君は少しくらい私に怒ったらどうなんだ…」
そんな会話をしながら車に乗り込むなり、補助監督の人に"すみません、なるべく急いで高専に"と伝えた。
高専に着くまでの間、特に何も話さなかった。
けれど、夏油はAの手を握り続けていた。
✱
高専に着くと、何故か五条と家入がいた。
『ねぇ傑くん、ホントにどういうこと?』
「…悟、」
「ちゃんと買ってきたわ、貸し1な」
そう言いながらビニール袋を揺らす五条。
「学長の許可も頂き済み〜」
タバコを口に咥えてピースサインをつくる家入。
「すまない…2人ともありがとう…」
Aは何も分からないまま、高専の校庭に連れられていた。
そして、ほい、と言われ五条から渡されたのは、花火だった。
「夏油がさ、さっき急にAちゃんとここで花火するって言い出して、急いで買ってきたんだよ、五条が」
『え、あ、ありがとう…!』
「別にいーよ、もともと傑が悪いし」
ビシッと指をさされた夏油は少しバツが悪そうな顔をしていた。
貴女の彼氏or彼女は??
新田新
88人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
結衣(プロフ) - コメントありがとうございます。とっても元気が出ました!更新頑張りますね!! (3月31日 19時) (レス) id: df2d4255b1 (このIDを非表示/違反報告)
えす - 続きおねがいします!!! (3月31日 18時) (レス) @page30 id: 93a8495db4 (このIDを非表示/違反報告)
結衣(プロフ) - 神様さん» お返事が遅れてしまいすみません。そう言っていただけて嬉しいです!頑張ります! (2月2日 16時) (レス) id: df2d4255b1 (このIDを非表示/違反報告)
神様 - 面白かったです!更新がんばってください! (1月21日 18時) (レス) @page24 id: 9fd19e5354 (このIDを非表示/違反報告)
神様 - ありがとうございます(≧▽≦)面白かったです! (1月17日 18時) (レス) @page22 id: 9fd19e5354 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:結衣 | 作成日時:2023年11月28日 19時