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8月23日。
その日は雨だった。
もはや恒例となりつつある、夏油の部屋での茶話会。
『傑くんに会うの久しぶりだ〜』
そんなことを呑気に話しているA。
ジメジメとした空気はあまり心地好いものでは無かった。
けれど、Aの笑顔をみていると、そんなことは全く感じなかった。
「だいぶ君の願いも叶ってきたけど、あといくつ残っているんだい?」
『えーっと、お祭り行って、花火見て、一緒に旅行して、それから雪で遊ぶの!やりたいことたくさんある!』
指折り数える彼女は本当に楽しそうで、それを見て夏油の表情も少し緩んだ。
そんな時だった。
突然夏油の携帯が音を鳴らす。
「すまない」
『お構いなく』
なんて会話をしたあとに電話に出た夏油。
その間Aは自分の携帯をポチポチと弄っていた。
しばらくして戻ってきた夏油は少し眉をひそめて言った。
「すまない、急に任務が入ってしまったみたいで行かなくてはいけないんだ」
『わ、そうなんだ、気をつけてね』
彼女、相当物分りが良くてむしろこっちが心配になる、なんて思いながら、上着を着て準備をしていると、不意に声をかけられた。
『その、呪術師ってさ、危ないお仕事…だよね』
「まぁ、そうだね。基本的に等級に見合った任務を請け負うけれど、絶対帰れるなんて保証はないね」
『じゃあさ、なんで呪術師するの?』
「弱きを助け強きをくじく、この社会はそういうものだよ」
そっか、とだけ返すと、Aは黙ってしまった。
「突然そんなことを聞いて、どうかしたのかい?」
『いや、大したことじゃないんだけど、傑くんが頑張る必要ないじゃんって思って…』
「えっと…それはどういう…?」
『私、みんなのために頑張ってる傑くんはすごくカッコイイと思うけど、それで傑くんが帰ってこないなんてことがあったらやだなって…あ、でも__』
"傑くんのやってることはきっと正しいんだと思う"そう言いかけたところで、その言葉は夏油によって遮られた。
「それでも、誰かがやらなければならないことなんじゃないかな」
『あ、うん…!それはそうだよね!』
「そもそも、同じ土俵に立っていない人間に口出しされる筋合いは無いはずだよ」
『あ…ごめん…でも私はただ傑くんが心配で…!』
その日は、雨だった。
ジメジメとした空気は身体にまとわりついてくるように感じられて、心地悪かった。
貴女の彼氏or彼女は??
新田新
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結衣(プロフ) - コメントありがとうございます。とっても元気が出ました!更新頑張りますね!! (3月31日 19時) (レス) id: df2d4255b1 (このIDを非表示/違反報告)
えす - 続きおねがいします!!! (3月31日 18時) (レス) @page30 id: 93a8495db4 (このIDを非表示/違反報告)
結衣(プロフ) - 神様さん» お返事が遅れてしまいすみません。そう言っていただけて嬉しいです!頑張ります! (2月2日 16時) (レス) id: df2d4255b1 (このIDを非表示/違反報告)
神様 - 面白かったです!更新がんばってください! (1月21日 18時) (レス) @page24 id: 9fd19e5354 (このIDを非表示/違反報告)
神様 - ありがとうございます(≧▽≦)面白かったです! (1月17日 18時) (レス) @page22 id: 9fd19e5354 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:結衣 | 作成日時:2023年11月28日 19時