検索窓
今日:3 hit、昨日:12 hit、合計:59,568 hit

第45話 ページ47

-


「...だとしたらどうするんだ」

「こうする」



諦めたように己の罪を認めれば、羌の右手が上がった



あの両刃の刀で切られる、そう思い咄嗟に目をつぶった




「!!」



その手は刀の柄を通り過ぎて、獪岳の頭の上に収まった



突然頭の上に乗せられた手に吃驚して目を開き、羌を見る獪岳



「どうした、切られると思ったのか?」



驚きすぎて返事もできない獪岳。それを無視してひたすら獪岳の頭を撫でる羌



「よくやったな」



そう一言だけ言い、また頭を撫でる羌。



「!...お、おい!!やめろ!!」



我に帰った獪岳は恥ずかしさから羌の手を退けさせる



「何故だ?俺はあんたを...」

「殺そうとした、か?」

「!!...」

「私にとってそんな事(・・・・)は別段大したことではない」



普通己を殺そうとした輩に恐怖や怒りを覚える。しかし、羌の場合それは本当に大したことではなかった




自身の姉とも呼べるべき存在が殺されたあの儀式では代表同士でも手を組んではならず、本来ならば張は殺すべき存在であり、張からしてみれば羌は殺すべき存在だった




張は1度羌を殺すための御業の修行のしすぎで倒れたことがあるが、それはまたの機会に




そんな死とまさに隣り合わせだった環境で育ち、生きてきた羌には、今更殺されようがあまり自身に関心がない



今はそれ()よりも大切な物があった



「よくやった、獪岳。私が行くまでよく持ち堪えた


___流石私の弟弟子だ」



再び獪岳の頭に手を伸ばし、そう言って頭を撫で続ける羌



その緑の瞳は雲のあいだから顔を出した月の光によって優しく光っている



「っ....」



何故だか視界がぼやけてくる。拭っても拭っても視界を遮るそれは獪岳にとって生まれて初めて流すものだろう



暖かいそれは獪岳が求め続けていた言葉であり、手だった



「(おや...)」



泣き出してしまった獪岳にどう接していいかわからず、張姉ならどうするかと考えた末出た結論は



「!!」



獪岳の涙を指で拭い、笑いかけるだった



なけなしの表情筋を集め、出た笑顔が歪だったからかもしれない、獪岳の顔は真っ青に変わっていった



「あんた血が!!」



そういえば止血を忘れていた、そんなことを意識が朦朧とする中羌は考えていた



暗転

第46話→←第44話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (39 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
57人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

戦力外(プロフ) - 甘音 舞影さん» ご指摘ありがとうございます! (2020年2月28日 14時) (レス) id: dcb72e1adc (このIDを非表示/違反報告)
甘音 舞影(プロフ) - プロローグの金臭い血の匂いは鉄ではないですか?いきなりすみません (2020年2月27日 22時) (レス) id: 299a382383 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:戦力外 | 作成日時:2019年8月13日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。