きつね ページ9
運転席にどかっと座った夏油先生に見えるようにわざとらしく痛くもない後頭部をさすってみせる
特にセットもしていない髪がぐしゃっと乱れた
寝癖がもっと酷いことになってしまった
しばらくやっていると夏油先生に鏡越しにふっと笑われたのでやめた。
少し恥ずかしかったので外に見える緑をぼーっと眺める
緑が移動し始めた
はぁ、とうとう任務が始まるよ
しばらく緑を眺めていると緑はだんだんと灰色のコンクリートに変わっていく。
俺はこの瞬間が好きだ。
タイムスリップしたような気持ちになるから
まぁ、高専が田舎すぎるだけなんだけど
がたがたと揺れる車に揺られながらどのくらいからど田舎になるのか考えていると揺れが止まった
「A、着いたよ。」
夏油先生が俺を見ずに一言放った。
車が止まったのは古い校舎の前。
窓ガラスにはヒビが入っているがかろうじて割れてはいない。
校庭には白線などなく、雑草が所構わず生え散らかしていた。
「ここでコックリさんをした3人の生徒が行方不明になった。かなり前の話だが目撃者がいなかったからね。発見が遅くなった。」
「そうですか。」
コックリさん。
って事は狐なのか？
てか、なんでコックリさんしてんだよ。
全国各地でコックリさんは行われているはずなのに、どうしてここだけ。
「この学校の近くに稲荷神社があるそうだ。それが原因なのかもしれないね。」
稲荷神社か。
「まあ、あれこれ考えても仕方ないですよね！今日は夏油先生も着いてきてくれてるし！少し気が楽です。」
無理やりテンションを，上げた。
そして手入れのされていない校舎へと足を踏み入れた。
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作者名：万年ぼっち | 作成日時：2023年12月25日 21時
