泥棒猫に負けた俺【男主】 (ページ42)

今日:32 hit、昨日:30 hit、合計:3,989 hit

ある日のページ42

夢をみた。

自分がまだ幼かった頃の夢。

朝日に起こされ、布団から起き上がると枕の横に両面宿儺の指が置かれていた。

夢のはずなのに嫌な汗が体から噴き出てくる。

この頃、俺は髪が長かった。
五条家の人間にせめて女のように大人しく生きろといわれ、髪を伸ばすことを強制されていたのだ。

今、髪の一部が長く、それを三つ編みにしているのはこの時の名残だ。

俺は強制されて伸ばしていた髪をもしもの時のために持っていた包丁でばっさり切って、両面宿儺の指に巻きつけふすまの外へと放り投げた。

ここには結界が張ってあり呪霊が入ってくることはできないのだが宿儺の指があるだけでも命がすり減っていく気がした。

髪の毛には封印する力があるとどこがで聞いたことがある気がする。

正しいかはわからないが何もしないよりはマシだろう。

ふすまを閉め、布団にくるまりこの事を忘れようとしたができなかったことをよく覚えている。

バタバタと足音が近づいてきた。
おそらく俺のところに宿儺の指を置いた奴らだろう。

勝手に髪を切ったことがバレれば罰は免れない。
逃げてしまえばいい、そう思うのだが体は動かない。

なんとか逃げようとしても体が動かない。
俺が体を動かさない間に見知らぬ大人が俺の部屋に入ってきた。

何を言っているのかはわからないが鬼のような形相で怒っているのはわかる。

「お前には罰を与えなければ！」

その言葉だけが鮮明に聞こえた。

声を上げることもできず、心臓だけが鼓動を速くする。

名も知らぬ大人に手首を乱暴に掴まれ、いつもの懲罰部屋へと連れて行かれる。

冷たい床に放り投げられ、起き上がると視界いっぱいに拳が広がった。