血液 ページ38
自分の苦しそうな息遣いが聞こえる。
何故俺は走っているのだろうか。
風向きに抗い交流会だというのに呪霊も探さずに。
頭では自分が訳のわからないことをしているのが分かっているのだが体が虎杖の元へ行こうとしてきかない。
その原因は脳裏に映し出されているあの時の五条先生の顔。
恋の力は偉大だと痛感する。
俺はどこまで行ってもあの人が好きなんだ。
自分の気持ちを改めて知り、走る足に力を込めたその時。
黒い何かが俺の目の前スレスレを通り過ぎ、そのまま木にぶっ刺さった。
何かが飛んできた方向をバッと見るとそこには落武者のような頭をした蛇のような身体の呪霊がいた。
おそらく二級以上
威圧感的に準一級の可能性を捨てきれない。
なんせ楽巌寺学長だ。
虎杖を殺すために用意したのだろう。
とにかく俺がこいつを倒したら勝ち！
「うわっ」
こいつベロも伸びんのかよ！
目の前に迫った舌をいつも持っているナイフで切り落とす。
するとそれが癪に触ったのかしらんがとんでもないスピードでこちらへ走ってきた。
普通主人公ならここで立ち向かうだろう。
でも俺は…逃げる！
俺そんなに強くない！！
準一級とかマジふざけんなってんだ！
あんなバケモンどう倒せってんだよー！！
こんなこと考えて走ってる間にも落武者もどきは蛇ならではの軟体を活かして木の間をするすると抜けてくる。
さて、どうしようか。
ひとつ確実に弱らせる方法はあるのだが…
それは痛いからやだな。
それ以外で何か！
なんかないか！？
なんもないわ！
俺もびっくり！
「うわっ」
何かに躓いたわけでもないのにこけた。
違和感のある足首を見てみるとやはり髪の毛でぐるぐる巻きにされていた。
呪霊はニョロニョロと確実に近づいてきている。
あの、俺蛇無理なんですよ
吐きそう
気持ち悪い
あの呪霊が近づいてくるにつれて謎の悪寒が背中を走る。
そしてそいつが目の前に来た時、俺の痛いのは嫌だという気持ちよりも蛇怖いという気持ちが大きくなった。
気持ちの天秤が傾いたのだ。
俺は自分の腕を切り、出てきた血液を足首に巻きついている髪の毛に垂らした。
すると俺の血が酸になったかのように髪の毛は溶ける。
それに驚いたのだろうか。
キモ蛇は少し怯んだ。
すかさず俺の血液が付着したナイフをそいつの首に突き立てる。
もらったと思ったのだがそいつは諦めが悪かった。
俺の腹に噛みついてきた。
痛さで体が硬直した。
血が草を濡らしていく。
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作者名：万年ぼっち | 作成日時：2023年12月25日 21時
