ちょっとね ページ22
「アイツらを守って、五条先生にもう悲しい思いは絶対にさせない」
決意を言葉にしてみたら背筋が伸びた
よし、がんばるぞ、と意気込んで拳をギュッと握り締めたら左手の人差し指にとんでもない痛みが電流のように走った
涙でぼやける視界で人差し指を見てみたら
「ぐろ」
指先がなくて、断面がとんでもないことになっていた
ああ、そういえば包丁で切ったんだったと思い出した時、
コンコンッ
扉をノックする音
「A先輩。生きてますか？入りますよ」
ガチャッという音と共に扉が開いた
「おはようございま、、どうしたんですか、その指」
「おはよ、恵ちゃん。指は包丁でちょっとね」
「ちょっとってレベルじゃないでしょう！？」
家入先生に診てもらいますよ、と恵ちゃんは切羽詰まったように俺の腕をひっぱった
ホントに大丈夫なんだけどな
あ、虎杖が死んでそういうコトに敏感になってるってことか
大人しく従っとくか
引っ張られるがままに歩いて行くと廊下に血が落ちていることに気がついた
これって夜俺が通って落とした血かもな
しかも盗み聞きしてたところにはちょっとした血溜まりができてるし
掃除大変そうだなぁ
「家入先生っ！」
ガラッと勢いよく恵ちゃんが医務室の扉を開けた
中には目の下にクマを使った先生方がいた
寝てないんだな
一目でわかるぐらい酷い
「どうしたんだい？そんなに急いで」
「あはは、ちょっと包丁で指やっちゃって」
「はぁ、そんなこと。消毒するから早く見せて」
背中に隠してた指を出すと部屋の中の空気が固まった
やっぱ見た目があれだから？
「これは、ちょっとってレベルじゃないね」
夏油先生がポツリと呟いた
「恵ちゃんも同じこと言ってましたよ」
へらりと笑ってみせると「笑い事じゃないです」と恵ちゃんが背中をバシッと叩いてきた
結構痛いんだが
てか俺怪我人なんですけど？
「反転術式で治すからこっちにおいで」
場の混乱に飲まれずに家入さんは冷静に言葉を並べた
それに従って呼ばれた方に行くとささっと治してくれた
いやー、忙しいのに本当に申し訳ない
長居するのも迷惑になると思ったから恵くんを連れてささっと医務室から出た
その時一言も言葉を発していなかった五条先生がどんな顔をしていたかなんて知らずに
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作者名：万年ぼっち | 作成日時：2023年12月25日 21時
