初恋はここから ページ13
そして夢を見た
子供の時の夢を
何時ごろだからわからないが俺は五条家の屋敷の台所にいた
今でも時々伺うことのある場所
だがどこか懐かしい
随分と視界が狭いし低いので俺がまだ小さかった時の記憶だからだろうか
「Aくん、これを悟様に運んできてちょうだい」
料理を作っていた1人の女性が俺に話しかけてきた
「はい、わかりました」
もちろん答えはYES
何故なら五条家では俺と俺の両親は召使のような地位にあるのだから
襖を開け、お盆を持ち、少し慣れてきた着物で歩き出した
廊下は寒かった
それもそのはず
いつも見える大きな庭が一面の雪景色になっていたのだから
寒さに耐えながら早足で、でも料理をこぼさないように歩いた
しばらく歩くといつも料理を運んでいる部屋が見えてきた
足に伝わる寒さに耐えながら襖の前に正座をし、自分の横にお盆をおいて静かに襖を開けた
そして頭を下げながら言う
「悟様お料理、お持ちいたしました」
「こっちにもってこい」
1人のジジイが言った
「承知いたしました」
呼ばれた方に足を進めた
そのジジイに案内されたのは例の悟様の場所
ん？悟様？これってもしかして
蒼の瞳が俺を見た
「は？ガキじゃん。ここで何してんだよ」
俺が初めて五条先生に出会った時の記憶
胸が自然と高鳴るのを感じた
「よし、下がれ」
案内してくれたジジイにそう言われたので「失礼しました」と言ってそそくさと廊下に出た
廊下はさっきまで寒かったはずなのに全然寒くなくて、なんなら暑いぐらいで
自分の心臓の音が痛いほど聞こえてきていた
今思えば、これが俺の初恋の始まりだったのかもしれない
ガタッと体が揺れた
そして視界もぼやけてくる
反射的に目を閉じた
そして開けると車の中だった
あ、夢が覚めたんだ
「ん？A、おはよう。よく眠れたかい？」
「はい、」
失恋したばっかなのに恋の始まりを見せんなよ
神がいるなら無能だな
そう思ったでも、
いるわけもない神なんて存在に八つ当たりしてしまう俺に少しイラっとした
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 66人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：万年ぼっち | 作成日時：2023年12月25日 21時
