35コール 黒刃 ページ37
*
部屋で一人、彼が置いていったワインセラーやワインを見ていると、虚しさが増す一方だったので、私は少し暗くなり始めた横浜の街に繰り出した
ひんやりとした夜風が頰を撫でる
目的地もなく暫く歩いていると、見覚えのある姿が暗い夜道を歩いていた
黒い長外套を羽織り、片手をポケットに入れる彼
気管が弱いのか、時折、苦しげに咳き込む音が聞こえる
あの人は……
“芥川龍之介”
今まで会ったことはなかったが、すぐにわかった
指名手配のポスターでよく見かけていたのである
だから、初めてあの人から間違い電話がかかってきて“芥川”の名前を聞いた時、何か聞いたことのある名前だと思ったのだ
今更ながらに合点した
あくまで芥川さんは指名手配犯なので話し掛けるのは怖かったが、私は思いきってその背中に声をかけた
『あ、あのっ!芥川さ……っ⁉』
刹那
芥川さんの外套がぶわりと靡いたかと思うと、鋭い刃になって、もの凄い勢いで私の方へ飛んできた
その黒刃は私の喉元すれすれでピタリと静止する
恐怖で声も出なかった
「貴様。
前をむいたまま至って平坦と話す彼から、恐ろしい殺気を感じる
彼は冷たい表情で、此方を向いた
私は蛇に射竦められた小動物のごとく、身体が固まって逃げれない
嗚呼もうここで終わりか、と思った瞬間。
私を見た芥川さんの表情に疑問符が浮かぶのが見えた
「……貴様もしかして、中原さんの云っていた“間違い女”か?」
だから、間違い電話をかけたのは私じゃない!
そうツッコミたかったが、私はとりあえず、芥川さんに向けて思いきり首を縦に振った
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水瀬琥雪 - うぅ…好きです!!こう言う恋も素敵だなぁ… (2022年12月21日 22時) (レス) @page46 id: 27e17eb645 (このIDを非表示/違反報告)
もち - 六さん» そうなんですね。ありがとうございます。 (2022年3月1日 19時) (レス) id: 71a9499b2d (このIDを非表示/違反報告)
六 - もちさん» あ、混乱させてすみません。もう自分が通報したので消えましたが、この葵って人、謝った後「なんて言うとでも思った?wwおばさんww」って返しててあまりに失礼だと思ったので介入しただけです… (2022年2月26日 0時) (レス) id: e32b92c4c5 (このIDを非表示/違反報告)
もち - 六さん» どういう状況すか?よくわからないんですけど。 (2022年2月24日 0時) (レス) id: 5b4b0a933b (このIDを非表示/違反報告)
六 - 名無しさん» 名無し、お前は間違ってないぞ。評価1000評越えが羨ましいキッズが妬んでアンチコメしたらばっちり言い返されてキレてるだけだからwこういう奴は相手する価値ない。無視しようぜ。 (2022年2月8日 1時) (レス) id: 7b7a62c26c (このIDを非表示/違反報告)
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