8、ちょっとした昔話2 ページ9
誰かの話し声で目を覚ますと、そこは見たことのない部屋で私はベッドに寝かされていた。ベッドと小さなテーブルしかない小さな部屋は病院のような印象を受けた。
「はっきり言って分からないことが多すぎる。唯一分かったのは血液型と年齢だけか。」
「かなり消耗していたみたいだったから急いでつれてきたが…ここまで分からないやつだとは思わんかったな」
声がして状態を起こすと備え付けられたガラス窓から二人の人影が見えた。一人は医師のような男。そしてもう一人は教会で出会った男だった。
「まずあの子の皮膚からは粒子レベルの小さい寄生虫…アーキアが無数に発見された。恐らくあの子は体内に寄生虫を宿して生きているんだろう。アーキアには色々な種類があるが、あの子の体にいるのは空気中の細菌を代謝するウィルスアーキアと呼ばれる種類だ。だから無菌状態だと拒絶反応を起こす。」
朝の光に照らされた自分の手を見る。傷ひとつない白い手だがその中には無数の虫がうごめいている。実際この虫との付き合いもそこそこのため私自身虫に依存している部分もある。
「食事も取らない。虫が代わりに細菌を代謝して宿主であるあの子にあたえる。呼吸もしていない。」
「呼吸をしていないだって!?」
男がすっとんきょうな声をあげた。
「…性格には肺呼吸をしていない。皮膚呼吸で酸素を得ている。」
正に化け物だ、と医師は続けた。その後二人は目覚めた私に気がついたのか部屋に入ってきた。
「…ハザマ。君が連れて帰れ。」
「はあ!?何で俺が」
「俺にはここでその子を養うだけの財力はないし、何より連れてきたのは君じゃないか」
男はあからさまに嫌な顔をしたが、諦めたのか私に向き直った。
「…お前、名前は?」
「…披研体510」
もちろん私に名前などない。研究所ではずっとこの名前で呼ばれていた。
「ハザマ、なんか名前つけてやれよ」
「考えるの面倒だな…」
といいながらハザマと呼ばれた男はわりと真剣な顔で考えていた。待つこと数分。
「コト…コト・アンノウン」
突然ハザマが口を開いた。突然の言葉に医師はその言葉を理解できていないようだった。
「コト・アンノウン…?どういう意味だい?」
「アンノウンはそのまま。正体不明の意だよ。コトは………俺の好きな東洋楽器の名前だ。」
これが、私がコト・アンノウンという名前になった瞬間だ。そして、私が初めて人と認められた瞬間であった。
「俺はハザマ。よろしくな、コト!」
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地獄狼(プロフ) - 白い雪さん» コメントありがとうございます!これからも頑張って更新していきますので、よろしくお願いします! (2018年11月24日 17時) (レス) id: 9982f25173 (このIDを非表示/違反報告)
白い雪(プロフ) - 何時も楽しく見てます( ˘ω˘ ) (2018年11月24日 17時) (レス) id: 91ed43297b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:地獄狼 | 作成日時:2018年1月4日 23時