27、誰かの独白 ページ28
「
今この言葉を私があの男に言い放ったら、その真意は彼に伝わるだろうか。
多分それは無理なのだろう。分かっていることではあるが、それは酷く寂しいことだった。
なぜお前は自らの生き場所だった戦場を離れ、退屈な平穏を求めた?
なぜ「
その真意は分からないが、恐らくあの戦場で彼の部隊が異形の傀儡に遭遇しなければ、彼を残して部隊が全滅しなければ、ジャルドーレ通りの死体回収屋は生まれなかったであろう。
だがその真意とは関係なく、私は生まれていた。彼と同じように、血と硝煙の香りが漂う戦場で。
欲望と力を求めて産まれた彼とは違い、私は知性と探求を求めて産まれた。
残念なことではあるが、彼は一度私と出会ったことを覚えていないだろう。
あの頃の私にはまだ顔があった。
彼が私の創作した神の残骸を前に部隊を奪われた時も、部隊の残骸を前に「エセ神父」と私を罵った時も、私にはまだ顔があった。
だが、その直後に私は全てを奪われたのだ。
顔も、これまでの研究成果も、激昂した彼によって全て奪われたのだ。
彼を恨んでいるかと聞かれたら、それは否だと答えるだろう。
それほどまでに、私にとってそれらはどうでもいい事なのだ。
私が長年研究してきた最強の神が、もうすぐ長き眠りから目覚めようとしている。
彼はどんな行動に出るだろうか。
進行地点であるあの通りを、命をとして守ろうとするだろうか。
否、そうするであろう。彼はそう言う男だ。
この神を前にしても、煙草を吹かして向かって来るだろう。
それもまた一興か。
男はそう呟いて、何かのスイッチを押した。
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地獄狼(プロフ) - 白い雪さん» コメントありがとうございます!これからも頑張って更新していきますので、よろしくお願いします! (2018年11月24日 17時) (レス) id: 9982f25173 (このIDを非表示/違反報告)
白い雪(プロフ) - 何時も楽しく見てます( ˘ω˘ ) (2018年11月24日 17時) (レス) id: 91ed43297b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:地獄狼 | 作成日時:2018年1月4日 23時