20、被験体0 ページ21
「被験体0。こいつらを肉片になるまで破壊し尽くせ。」
男はそう言い残すと踵を返して研究施設の奥に引っ込んでいった。残ったハザマとコトの前に二メートル程はある大男が立ちふさがった。他の異形とは違い人間の姿を保ったそれは軍服を着込み、顔にガスマスクを装着していた。
「…ハザマ」
「言われなくても分かってる。こいつは危険だ。」
ハザマが警戒しながら刀を構え、コトはベイオウルフとジャバヴォックの弾丸を再装填し直した。
『……ア、アア』
突如ゼロが言葉にならない声を発した。そして…
『アアぁぁぁぁぁぁぁ!』
絶叫。それと同時にゼロは消えた。正確には視界から消えたのだ。そう、その巨体から出たとは思えない程の速度でハザマ達の後ろに回り込んだのだ。
ハザマが直感を信じて前に走りだし、コトが振り向き様に二丁を乱射する。ゼロが振りかぶった拳は先ほどまでハザマがいた空間を凪ぎ払い、風圧でハザマは吹っ飛んだ。からぶった所にコトの弾丸がゼロの頭部にヒットするが、効果があるとは思えなかった。
『オウラぁぁぁぁ!!』
またも絶叫と共に今度はコトに殴りかかる。その太くて頑丈な腕から繰り出される攻撃に当たれば即死はせずとも十中八九負傷することは目に見えていた。バックステップを踏みながらコトは退避し、その後ろをハザマが切りつける。
「図体の割に合ってねぇよ、あの移動速度!」
「…弾、ほとんど当たらないんだけど?」
『ゴアぁァァァァァ!』
そんな話をしている間にもゼロは絶叫をあげて突っ込んでくる。その動きは他の異形とは明らかに違う。高速で移動して、ハザマ達が最も苦手とする位置・タイミングに攻撃を正確に当ててきている。それはつまりこの被験体が知能を持っていると言うことだ。流石に意志疎通はできそうにないが…。
「…どうすか。」
刀の刃を確認しながらハザマが呟く。その横ではコトが何かに気が付いた様子でゼロを見ていた。
「…多分あいつ、簡単なパラサイトセラピーを受けている。」
「パラサイトセラピーだぁ!?」
ハザマがすっとんきょうな声をあげてコトをみる。ゼロはと言うと体を少し前傾姿勢にして動きを静止していた。すると、先ほどハザマが切りつけた背中の傷とコトが撃ち抜いた頭部の銃痕からみどりの煙が上がり始め、みるみるうちに傷を再生してしまった。
「…私より適合していない。再生していることが分かりやすいし、速度も遅い。そのうちに追い付かなくなる。」
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地獄狼(プロフ) - 白い雪さん» コメントありがとうございます!これからも頑張って更新していきますので、よろしくお願いします! (2018年11月24日 17時) (レス) id: 9982f25173 (このIDを非表示/違反報告)
白い雪(プロフ) - 何時も楽しく見てます( ˘ω˘ ) (2018年11月24日 17時) (レス) id: 91ed43297b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:地獄狼 | 作成日時:2018年1月4日 23時