↑続き ページ8
莉犬Side
「えっ…そんなことないですよ、大丈夫です」
るぅとくんは首を横に振り、そう答えた。
でも、確かに顔色は悪いままだ。
「そう…ならいいけど、何かあったらちゃんと頼ってね？」
「はい、そうします」
なーくんの言葉にるぅとくんはニコリと笑ったが、その表情に何か違和感を感じて、やっぱり少し心配になる。
「るぅとくんー、俺家まで送ろうか？どうせ近いし」
そう提案してみる。俺はるぅとくんと家が近い。これまでも家まで送ることはよくあったのだ。
「え…だ、大丈夫ですよ」
「えー、俺も話したいし、ダメ？」
バシン！
「えっ…」
鈍い音と共に突然手に痛みが走り、意味のない一文字だけが口から漏れる。
「あっ…ぅえ…ごっ、ごめんなさい…！」
この音は、無意識にるぅとくんに伸ばしていた手が振り払われた音だった。
「…ほ、ほんとに…ごめんなさいっ…」
突然の事にみんな揃って呆然としているうちに、るぅとくんは泣きそうな顔で走り去って行ってしまった。
「…っ、俺っ、追いかけてくる！」
「あっ、莉犬くんっ」
後ろから聞こえた声も気にせず、俺はただるぅとくんを追いかけてひたすら走った。
るぅとSide
「はぁ…はぁ…」
どうしよう。さっき、莉犬に手を差し出されて、思わず振り払ってしまった。そのまま家を飛び出してきてしまったし…
もう、嫌われた、かもしれない。
視界がぼやけて、鼻の奥がツンと痛む。
目をぬぐって、必死で涙をこらえながら、まだ走り続けた。
ストーカーが来るかもしれないから。みんなに、迷惑はかけられない。
コツ…コツ…
(…！？)
…前と同じ、ハイヒールの音。しかも、大分近くまで来ているのに気が付き、バッと後ろを振り返った。
「…みんなに嫌われてくれた？」
そこにはそこそこ美人の女が立っていた。
口元に笑みを浮かべているが、目は全く笑っていない。
「っ…お前っ…」
「あははっ、あなたが邪魔なのに。メンバーだって、本当はあんたが嫌いなのよ。なんで早くすとぷりから抜けてくれないの？」
迫ってくるストーカーに、後退るが、背中が壁に当たった。どうやら、走っているうちに行き止まりの道に入ってしまっていたようだ。
「…もういいわ。最初からこうしとけばよかった。」
目の前で立ち止まったストーカーは、突然そう言うと持っていた鞄の中に手を入れた。
「あっ…え…？」
その手に握られていたのは、鈍い光を放つ包丁だった。
「死ねっ！！」
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作者名：ゆう | 作成日時：2021年1月5日 18時
