恋をすると (ページ32)

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帰り道、今居たお店からさほど遠くない檜山の家まで自転車を押して歩いている間に、皇輝先輩とのことを全部話したら満足気に安堵の息を漏らした檜山。

｢良かったじゃん、｣

『うん、色々ありがとね。』

｢おれ何もしてないよ。｣

らしくない檜山の優しい笑顔に、
皇輝先輩のことになるといつも檜山に助けられてる気がするなあ、なんて今更ながら思った。

｢さっき、ごめんな｣

『ん、？』

｢いきなり、あんなこと言って｣

『なに気にしてんのよ、』

綺麗な眉を下げて、わざわざ立ち止まってまでそう言った檜山が面白くて少し笑ってしまう。

『いいよ、一応納得したからあの説明。』

｢いや、うん、それならいいんだけど、｣

『しかもね、ちょっとキュンってしちゃったし。』

あれっきりシュンとしっぱなしの檜山を元気づける為に言ったつもりが、

『え、。…今照れる場面あった…？』

｢、照れてない｣

ちょっと伸びてきた髪の隙間から見える耳は暗闇でもよく分かるくらい真っ赤。

『赤くなってるよ、』

そう言って少し上にある真っ赤なそれに手を伸ばしたら、
同じように伸びてきた腕に強く腕を掴まれて、

『え、ちょ。』

抵抗する間もなく何度目かの檜山の腕の中にしまわれる。

｢…付き合ってよ。｣

『、…また』

｢おれ本気で言ってる。｣

『もういいって、』

なんでまたそれ？って離れようとしたけど力じゃ適わなくて

｢あーー、さっきあんなこと言わなきゃ良かった。｣

おれマジで馬鹿なことしたわ。

自分に呆れたようにそう付け加えて、
私の耳元でまた大きなため息をついた。

両腕が私の腰に回っているせいで足元に無造作に倒れた自転車のペダルが回って地面と擦れる少し嫌な音。

『ね、やだ。...離して、』

｢、…好きなんだよ。｣

『ひや、ま……、っ』

一瞬離れたと思った距離がまた０になって、

『…なんなの、』

自分でも頭が追いつかないくらい一瞬のこと、

｢、ごめん。｣

私が呆然としている間に起き上がらせた自転車に跨って
そそくさと来た道を戻って行った檜山。

まだ唇に残った暖かい感触に
たった今起こったことが鮮明に蘇ってきて顔が熱くなる。

体の力が抜けて地面に落としてしまったカバンを手に取って
檜山とは反対方向に足を進めた。

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