恋をすると (ページ21)

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「、はあ……」

電車の中で必死に涙を堪えながら
やっとの思いで家の最寄りの駅に着いた。

まだ帰る気分にもならなくて、
檜山と瑠奈とよく行く地元のカフェで大きなため息をこぼしていた。

可愛かったなあ。
ああいう人が好きなのかな。先輩、

思い出したくないのに、
どうしても蘇ってきてしまう。

「、え？」

『…ん、』

あ、

「、お前何してんの？」

テキストとペンケースを手に持ったまま
心底驚いたような表情で近づいてくる。

仕方ない。これでもかと言うほどうきうきで飛び出していった女がこんな時間に小さなカフェの角の席で項垂れていたらこんな顔にもなってしまう。

「先輩は？」

『、もう帰ったよ』

「送ってもらってないの？」

『ん、1人で帰れるもん、笑』

「服似合ってんじゃん、」

『え、？あ、ありがとう』

「まあ、俺が選んだからそりゃそうか」

『ん、そうだね。』

あの檜山に、
いつもの調子で対応出来る元気もない。

「…はあ、いつ帰んの」

『え、これ飲み終わったら…、？』

「そう。」

それだけ聞くと、私の目の前に腰掛けて、
当たり前のようにテキストを開く檜山。

呆然とする私に、
後で話聞いてやるから早く帰るぞ。と
呆れたような笑顔を見せる。

『、ありがとう』

「もう数学飽きたから、早く飲みきって。」

『ん、分かった。』

珍しく優しい檜山のおかげで
少し気持ちは楽になった。

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