episode47★｡.* ページ49
霧野side
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霧(逃げられた……)
これ以上にショックなことは無い。
廣瀬、やっぱり怒ってるのだろうか。
だとしたら、何に？
むしろ俺が怒りたいくらいなのに。
ただ、なんとなく、不安になった。
……嫌われていたら…どうしよう、とか。
女々しい自分に嫌気がさす。
でも、そんなことどうでいいと思うくらい、本気で嫌だった。
霧｢……あ。｣
と、足元に落ちているスケッチブックを拾う。
廣瀬のものだ。また落としていったのか。
なんとなく、表紙を開く。
彼女が新しく描いていなければ、全て見た事のある絵…
……の、はずだった。
神｢霧野？｣
霧｢……｣
背中から、神童の声がした。
返事をする余裕など、今の俺にはない。
神｢霧野？顔真っ赤だけど、大丈夫か？｣
左手で口元を覆った。
身体中のあちこち、特に顔が、熱くなるのがよく分かる。
神｢霧野…それ…｣
霧｢……うん、廣瀬の。｣
スケッチブックに描かれていたのは、全て“俺”だった。
部活中、友達と話しているところ、馬鹿やって笑っているところ。
廣『私が綺麗だと思ったものを、絵にしてるの。』
廣瀬のその言葉が突然頭をよぎって、身体は更に熱を増した。
…綺麗だと、思ったもの。
少し、自意識過剰すぎるだろうか。いや、これくらい思ったって仕方がないだろう。
彼女は、思ってくれたのだ。俺が、“綺麗”だと。
いつもなら、聞きたくもない言葉だった。
可愛いだとか綺麗だとか、女子が喜ぶようなことを言われるのは嫌いだ。
なのに、何故か今はそんな気分にはならない。
何故だろう。答えはとっくに知っていた。
2年前と同じ感情。下手したら、それよりうんと大きい気がする。
霧(…そっか……俺…)
……恋、というのは。
あんなにもつらい思いをしてきたのに、こんなにも早く次がやってくるものなのか。
以前よりも強く、ひたすらに大きく、
“好き”という感情が、俺の胸を支配した。
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作者名：☆Cirno☆ | 作成日時：2019年6月22日 15時
