君と空を見上げれば２ (ページ11)

今日:3 hit、昨日:1 hit、合計:12,682 hit

episode52☆*: ページ11

夢咲side

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

それは1月。学校が始まってからのことだった。

特に変わったことは無い。

あると言えば…サッカー部のカップルが1つ増えたことくらいだ。

そう、何も変わらなかった。

私が先輩にアタックすることも、何も…。

霧｢もうやめよう、緋彩。｣

夢｢へ…｣

あまりにも突然過ぎて、頭が追いつかない。

部活が無い日の放課後の図書室、霧野先輩がいきなりそんなことを言い出した。

霧｢お前にはさ、俺よりお似合いな奴がいるよ。俺よりお前を幸せにしてくれる奴が、近くにいる。｣

夢｢そんなの…いたって変わりません。私はずっと先輩のことを────｣

霧｢俺も同じなんだよ。｣

その言葉の意味が、私にはすぐに分かった。

胸にズシッと乗っかって、急に目頭が熱くなる。

先輩も変わらない。

ずっと、お姉ちゃんを……。

霧｢…ごめん。こんなことしても、お前が喜ばないことは分かってる。

でも、お前のためだと思ってる。信じてくれ。｣

私は、静かに頷いた。

それと同時に瞬きをした時、一筋の涙が頬を伝った。

夢｢じゃあ先輩……最後に、ちゃんと言わせてください。聞いてくれますか？｣

霧｢…もちろん、いくらでも。｣

私は振り返って、ドアの方を見た。

先輩に背中を向けて、しっかりと涙を拭く。

そして、今できる最高の笑顔で先輩に言った。

夢｢大好きですっ……！｣

言い捨てるように、私は図書室を出た。

…｢大好きでした｣じゃなくて、｢大好きです｣。

過去形にするのは、まだ早い気がした。

私が前に進めると思った時…そうだ。

私が新しい恋を見つけた時にしよう。

その時まで、この言葉はまだ言わない。

その後、カバンを持って校舎を出た。

誰もいない道を、1人で歩く。

夢｢……っ…｣

分かってた。

いつかこんな日が来ること。

夢(ダメだなぁ…私っ…。)

泣いたって、何も変わらないのに。

止まらない。止める理由もない。

だって、もう無理だから。

諦めないことさえ、諦めるしかないんだから。

お姉ちゃんの代わりには、なれない。

お姉ちゃんみたいな人気者に…

漫画のヒロインみたいな人に、私はなれない。

美｢緋彩。｣

曲がり角の奥から、美月の声が聞こえた。

美月はどうすることもなく、ただひと言…私に言った。

美｢帰るぞ。｣

その時の私にとってこの言葉は…

世界一、暖かい言葉に感じた。