26 ページ26
.
「お父さんっ！」
そう言って重岡さんの元へ行くお母さん
僕はまだ重岡さんがお父さんだということに実感が湧かなくて
どうしてもお父さんと呼べずにいた。
「幸せ、やなあ...」
そう天井を見つめ呟く重岡さん
「なんで、なんではやく言わなかったのよっ...」
お母さんがそう言っても
重岡さんはもう記憶がないみたいで
「なーんにも、言ってない、で...？ふふ...」
もう隙間風みたいな笑い方しかできない重岡さんを見ているのは
まるで地獄やった。
そんな僕に気付いたのか重岡さんは
「あ、そうや...」
「智洋...こっち、来てや、」
重岡さんのところに行くのにすこし戸惑った。
でも
僕は一歩ずつ進んでいった。
やがてベッド脇にたどり着くと
「あと、30分後、やけど、これ」
『え、...？』
小さい箱を渡された。
開けると
『時計...？』
なんとも微妙なセンスの時計
それと
『メリー、クリスマス...？』
決して綺麗とは言えない字で
不器用にそう書かれていたカードを見て
僕は重岡さんを見た、
「メリー、クリスマス、やで、智洋」
「今年の、も、気に入って、くれると、ええなあ...」
まさか...
『毎年、プレゼントくれてたのって...』
僕の頬に暖かいなにかが伝った気がした。
「もう、なにをあげたか、思い出せへん、けど...」
「時計、かっこええ、やろ...？」
「字、頑張って、書いた、けど、汚いなあ...」
"ごめんなあ"
そう言って笑った。
僕は今までのことが全て繋がった。
なぜ名前を教えていないのに知っていたのか。
なぜクリスマスプレゼントに入っている手紙が年々短くなっていったのか。
なぜ指輪に daiki という文字が彫られていたのか。
今、全てが繋がった。
『お、お父さんっ...』
『ありがとっ...ほんま、ありがとうっ...』
そう言うとお父さんは笑って
「初めて、智洋、に、お父さん、って、呼ばれたなあ」
「幸せや、なあ...」
そう言い残してお父さんは目を閉じた。
そして
病室には無機質な音が響いた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 529人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズWEST」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
小恭(プロフ) - クリスマスのシーズンを等に過ぎてますが、読ませていただきました！感動して、涙が止まりませんでした。これからも応援しています！！ (2019年2月16日 21時) (
レス) id: 0f7c4a1a70 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの(プロフ) - Yumiさん» とっても具体的に述べてくださって本当に嬉しい限りです！こちらこそ最後まで読んでくださりありがとうございました！ (2019年1月20日 0時) (レス) id: 26039588f2 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの(プロフ) - renkamiyama0701さん» 嬉しすぎます！！ありがとうございます！全部読んでくださってありがとうございました！ (2019年1月20日 0時) (レス) id: 26039588f2 (このIDを非表示/違反報告)
Yumi(プロフ) - はじめまして！たまたま目に留まったので読ませていただきました！24ページの後半からもう涙腺崩壊で号泣でした！シゲの最期の「幸せやな」と最後のビデオレターのちゃんと喋らない感じ。もうなんとも言えないです。こんなにも感動する話をありがとうございます！！！ (2019年1月18日 0時) (レス) id: 05654e4043 (このIDを非表示/違反報告)
renkamiyama0701(プロフ) - こんにちは！ 全部読ませてもらいました！ もう本当に涙が止まりません。 感動を超えています。(笑)本当に良い作品でした！これからも頑張ってください！ (2019年1月7日 2時) (レス) id: 26b41b72a1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぴの | 作成日時：2018年12月21日 22時
