はたち あまり みっつ ページ24
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がばっ、と勢いよく起き上がる。
荒く肩で息をしながら辺りを見回すと、部屋はまだシンと静まり返っていて、窓の外も少し白んできたくらいだった。
随分、早く起きてしまった。
なんだか寝直す気にもなれなくて、仕方なく膝まで布団をかけたまま、ぼんやりと宙を見据える。
──なんだか今日は、いやに夢見が悪かった。
どんな夢を見ていたかは、ハッキリとは覚えてないけれど、少なくとも、反射的に飛び起きてしまうくらいには、悪い夢だったのだろう。
それにしてはなんだか──そう、何か、大切なことを聞いたような気も、するのだけれど。
「あれ? A起きたの?」
まだ変声期前の高めの声に振り向くと、そこには木兎くんがいた。
半袖に、ジャージのようなものを腰に巻いていて、肩にはタオル。
……運動でもしていたのだろうか。つくづく元気な子だ。
「うん、さっき起きた。……木兎くんは何してきたの」
そう尋ねると、案の定「ランニング」という言葉が返ってきた。
……うーん、元気だなあ。
「やけに早いなお前。いつもこんくらいに起きンの?」
「んーん。いつもはもっと遅いよ。でも今日は……多分、昨日早めに寝たから、目が覚めちゃったんだと思う」
「ヘェ、そういうモン?」
唐突にドスンと隣に座り込んできて、少しびっくりする。
汗の匂いと混じってふわりと香ってきた石鹸の香りに、そういえば私、昨日からずっと着替えてないな、と思い出し、ちょっぴり羞恥。
人間、気づいてしまうとどうしても気になるもので、居心地の悪さにもぞもぞしていると、木兎くんが口を開いた。
「なァ、その『木兎くん』ってのさ、やめねー?」
「えっ?」
「なんかたにんぎょーぎ? みたいでやだ! 俺とお前、もう友達だろ?」
……えっと。友達、なのか。私達って。
思わず首を傾げそうになったけれど、そうするとこの子の機嫌はもっと悪くなるだろうな、と思い、頷いておく。
「ん、わかった。それならよろしく、えっと……光輝くん」
「おう!」
気恥ずかしくも名前呼びをすると、木兎くん……もとい光輝くんは、嬉しそうにニカッと笑った。
それにつられて、私も少し笑みを零す。
この頃には、もうあの夢のことなどすっかり忘れてしまっていた。
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麗夢 - 前見た時本当に感動してまた読みに来ました。私が知っている夢小説の中で1番大好きな作品です! (3月1日 23時) (レス) @page44 id: 6ebe956d7c (このIDを非表示/違反報告)
にっこり(プロフ) - 感動したやっぱりお父さんって大事だなぁ後光輝君もいいな! (2021年8月25日 7時) (レス) id: ec120adb39 (このIDを非表示/違反報告)
藍琉(プロフ) - とても感動しました!!!!泣きながら読んでました!この作品に出会えて良かったです!ありがとうございました!!!! (2020年6月11日 0時) (レス) id: e2f068ce6d (このIDを非表示/違反報告)
芥川とミルクティ - 何度見ても泣きます。もう最後なんか、嗚咽が止まりません。本当に感動する素晴らしい作品です。作者様のとても美しい文章に惹き付けられます。 (2020年3月14日 20時) (レス) id: 9ec8afc8ac (このIDを非表示/違反報告)
哀駒(プロフ) - 完結おめでとうございます^^もう泣きすぎて明日目腫れそうです…w (2020年3月10日 22時) (レス) id: 677b3c59a5 (このIDを非表示/違反報告)
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