ふたつ ページ2
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『お父さんを、どうか嫌わないであげてね』
お母さんが、よくいっていた言葉。
寂しそうに誰かの写真を見つめて、ポツリと呟いた名前は、確か『けいじ』というもの。
それが、お父さんの名前なのだろうか。
会いたい。会って話がしたい。
母がいなくなってしまった今、私の中にある気持ちは、ただそれだけだった。
毎年 私宛に届く誕生日プレゼントを、お父さんはどんな気持ちで選んでいるんだろう。
どうして、私の側に──お母さんの側に、いないんだろう。
やがておばさんが戻ってきて、車で私の家に向かった。 まずは遺品整理が先らしい。
家に着くと、物がいっぱい詰められたダンボールが無造作に置かれているのが見えて、少し悲しくなる。
──こんな時に、家族がいたなら。
私は1人でこんな悲しいこと、しなくて済んだのだろうか。
かれこれ1時間ほどダンボールの仕分けをしているけれど、全く終わる気配がない。
気が遠くなるような無心の作業は、思いのほか大変で、思い出を振り返っている余裕もなかった。
ようやっと2つ目のダンボールの仕分けが終わって、箱を畳んだ時。
ふと 目に止まったのは、『赤葦京治』という文字だった。
「あか……あし、きょうじ……? ……ううん、…………けいじ?」
文字をなぞって、声に出す。
けいじ。その名前は。
「これ……お父さんからの誕生日プレゼントが入ってた、ダンボール……?」
気にとめたこともなかった。
だって、お母さんがいたから。
でも……、
お母さんがいなくなってしまった今、私には。
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麗夢 - 前見た時本当に感動してまた読みに来ました。私が知っている夢小説の中で1番大好きな作品です! (3月1日 23時) (レス) @page44 id: 6ebe956d7c (このIDを非表示/違反報告)
にっこり(プロフ) - 感動したやっぱりお父さんって大事だなぁ後光輝君もいいな! (2021年8月25日 7時) (レス) id: ec120adb39 (このIDを非表示/違反報告)
藍琉(プロフ) - とても感動しました!!!!泣きながら読んでました!この作品に出会えて良かったです!ありがとうございました!!!! (2020年6月11日 0時) (レス) id: e2f068ce6d (このIDを非表示/違反報告)
芥川とミルクティ - 何度見ても泣きます。もう最後なんか、嗚咽が止まりません。本当に感動する素晴らしい作品です。作者様のとても美しい文章に惹き付けられます。 (2020年3月14日 20時) (レス) id: 9ec8afc8ac (このIDを非表示/違反報告)
哀駒(プロフ) - 完結おめでとうございます^^もう泣きすぎて明日目腫れそうです…w (2020年3月10日 22時) (レス) id: 677b3c59a5 (このIDを非表示/違反報告)
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