【HQ】父親って。

ひとつ ページ1

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　お母さんが、死んだ。



　元々体の弱い人だったけれど、つい先日、眠るように息を引き取った。

　私は病院で、お母さんが楽になるまでずっと手を握っていた。


　お葬式のとき、あまり大勢とはいえない人が、お母さんに線香をあげて行った。



　……その中に、父の姿はなかった。








▲▽▲▽▲




「それじゃあAちゃん、先に車に戻っていてね」




　おばさんはそういってから、そそくさとどこかへ行ってしまった。

　お母さんが死んで ひとりぼっちになった私を引き取ってくれたのは、かなり遠縁のおばさん夫婦だった。



　だいぶ血の繋がりも薄いが、私を引き取れるところはそこしかなかったらしい。

　祖父母もいない私にとっては、薄くても唯一血の繋がりのある人だといえた。




　──けれど正直、おばさん達は私のことを、あまりよく思っていないだろうな、と思う。

　うちのお母さんは、結婚せずに私を産んだから。




　お母さんによると、私は昔の恋人との間にできた子らしい。 その恋人とは、訳あって結婚できなかったのだとか。


　私を産んでから、お母さんが他の誰かと結婚する、なんてことはなく、結局私は母1人子1人の家庭で育った。

　父がいないことに、多少の寂しさを感じたことはある。 けれど、不満はなかった。




　……でも。

　他の人達からすれば、私はどこの誰とも知らないやつとの間に産んだ子、ということになる。

　つまり、私生児というやつだ。


　そんな素性の私を、親戚達が毛嫌いするのは、正に必然的といえた。



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