みそじ あまり むっつ ページ38
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京也はしばらく不安げにこちらを見つめていたけれど、やがてこくりと頷いた。
「Aおねぇちゃんも、一緒に行ってくれるんだよね?」
心配そうに尋ねる京也に頷いて、一緒に手を繋いで歩き出す。
すっかり晴れた空の下、京也の掌は少し湿っていたけれど、とても暖かかった。
▲▽▲▽▲
バクバク鳴る心臓を無視して、ピンポンとチャイムを押す。
やがてバタバタと扉の向こうから足音が聞こえてきて、勢いよく扉が開いた。
「京也!!」
思わずゴクリと喉を鳴らす。
必死そうな声と顔と共に現れたのは、いわずもがな、赤葦京治だった。
私は突然の登場にどぎまぎしながら、平静を装って状況を説明する。
この状況を選択したのは、自分なのだ。 しっかりとやり遂げなくてはならない。
「さっき、雨が降ってきた頃、公園で見かけて。一人で歩いていることを疑問に思って話を聞いたら、家出中だといっていたので、宥めて連れてきたんです」
私の存在に驚いている赤葦京治にそう説明して、私は京也の横に膝を折る。
そして、不安そうな京也に頷いた。
私の頷きを見て、京也はゆっくりと頭を下げた。
「ごめんなさい、お父さん」
それからパッと顔を上げて、そそくさと私の後ろに隠れる。
その事に一瞬瞠目して、けれど顔には出さずに喋り続ける。
赤葦京治はというと、さっきからずっと黙りこくっていた。
「……京也くん、お父さんに嫌われちゃったんじゃないかと思って、帰れなかったみたいなんです。ちゃんと仲直り──してくださいね」
最後にそういって、私は立ち上がった。
京也に服の端を掴まれて、寂しそうな顔で見上げられたけれど、すぐに行ってしまうつもりだった。
これ以上ここにいたら、どうにかしてしまいそうだったから。
……本当は私のことを打ち明けるはずだったのに、とんだ一日になっちゃったな。
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麗夢 - 前見た時本当に感動してまた読みに来ました。私が知っている夢小説の中で1番大好きな作品です! (3月1日 23時) (レス) @page44 id: 6ebe956d7c (このIDを非表示/違反報告)
にっこり(プロフ) - 感動したやっぱりお父さんって大事だなぁ後光輝君もいいな! (2021年8月25日 7時) (レス) id: ec120adb39 (このIDを非表示/違反報告)
藍琉(プロフ) - とても感動しました!!!!泣きながら読んでました!この作品に出会えて良かったです!ありがとうございました!!!! (2020年6月11日 0時) (レス) id: e2f068ce6d (このIDを非表示/違反報告)
芥川とミルクティ - 何度見ても泣きます。もう最後なんか、嗚咽が止まりません。本当に感動する素晴らしい作品です。作者様のとても美しい文章に惹き付けられます。 (2020年3月14日 20時) (レス) id: 9ec8afc8ac (このIDを非表示/違反報告)
哀駒(プロフ) - 完結おめでとうございます^^もう泣きすぎて明日目腫れそうです…w (2020年3月10日 22時) (レス) id: 677b3c59a5 (このIDを非表示/違反報告)
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