【HQ】父親って。

よっつ ページ4

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「……ここが、梟谷学園」



　あれから3日、私はとりあえず『赤葦京治』の自宅に行き、職業を突き止めた。

　それでわかったのは、どうやら彼は教師をしているらしく、その勤め先がここ、梟谷学園である、ということ。



　──ストーカー紛いのことをしている自覚はある。 でもこうでもしないと、私のような子供は彼には辿り着けない。




　伝えたい、だけなんだ。


　母のことを。


　私のことを。



　元気でやってますって、言いたいだけ。


　そうしたら、もう帰るから。




「……」




　校門の前で、『赤葦京治』が出るのを待つ。
　時刻は夕方。 ……より、ちょっと夜。

　丁度空が紫色になるくらいの時間帯。 『赤葦京治』は、いつもこのくらいに外に出てくる。



　……改めてそう考えると、帰宅時間まで知ってるって、私、かなり気持ち悪いな。

　──そんなことを考えながら、徐々に瑠璃色に染まっていく空を眺めていると、




「……あれ、君……他校生？」




　低めの声に目を瞬かせて、ゆっくり振り向く。


　ねえ、“お父さん”。

　貴方、そんな声してたんだね。




「……はい、」




　小さくそう呟くと、彼は「早く帰りなよ」といって自転車を漕いで行った。



　初めて、近くで見た。

　初めて、声を聞いた。





　ドクドクと心臓がうるさくて、緊張からか何からか、ブワッと冷や汗が噴き出してくる。




　あれが、赤葦京治 なんだ。


　あれが、お父さん なんだ。








　初めて聞いた『お父さん』の声は、想像よりずっと若くて、少し掠れていた。


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