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「うわぁ!美味しそう!」


放課後、私たちは約束通り駅前のケーキ屋を訪れていた。


入って早々目を輝かせる玲奈。


そしてそれをぼーっと見つめる及川。


このなんとも言えない空間が私は楽しかった。


「及川くん!このショートケーキ美味しそうじゃない?」


すると、突然玲奈が及川にそう問いかけた。


思わぬ質問に及川は戸惑っている。


「うん、美味しそうだね!俺これ食べようかな」


及川は迷わずそう決めた。


『…』


私はそれを見て黙り込む。


私はしばらくチーズケーキとチョコケーキを交互に眺めた結果、チーズケーキを買うことにした。






及川side


「及川くん、ショートケーキ食べないの?」


高嶺さんの質問に俺は「ははは…」と苦笑いした。


「(思わず言われたから頼んじゃったけど、俺ショートケーキ苦手なんだよね…)」


でも今更苦手だなんて言えない。


勧められたからって買ったのに、実は苦手でしたなんてださすぎる。




Aは何をしているのかと言うと、一生頼んだチーズケーキの写真を撮っていた。


普段はそんなことしないくせに。



ぼーっと考えていると、高嶺さんが立ち上がった。


「ちょっと御手洗行ってくるね!」


そう言ってパタパタとトイレに向かう高嶺さんの背中を見送って、俺は小さなため息をついた。


「はぁ…めっちゃ気遣う…」


そう呟く俺の傍らで、Aはスマホを片付けていた。


すると、Aは俺の皿と自分の皿を交換した。


「え?ちょっと」


Aは俺が買ったショートケーキを頬張り始めた。


『ショートケーキ苦手でしょ?ほら、早く食べないと玲奈帰ってくるよ』


言われるがまま、俺はAに渡されたチーズケーキを口に運んだ。


口の中でとろけるこのチーズケーキは俺の好みドンピシャだった。


「うま!」


『このショートケーキも美味しい〜!』


俺はペロッとチーズケーキをたいらげてしまった。


それを見たAは自分の食べ終わった皿と俺の皿をもう一度交換する。


そのタイミングでちょうど高嶺さんが帰ってきた。


「あ、2人とも食べ終わったんだ!美味しかったね〜」


高嶺さんは俺がショートケーキを食べていないことに気づいていなかった。



「(俺がショートケーキ嫌いだからってチーズケーキ買ってくれてたんだ)」


Aの好物がチョコケーキなのは知っている。


自分だって食べたかったろうに。


Aの優しさに、俺は自分の顔が熱くなるのを感じた。

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げのげ(プロフ) - ハルスケさん» ありがとうございます!とても励みになります🥹 (1月29日 17時) (レス) id: f5508f1222 (このIDを非表示/違反報告)
ハルスケ(プロフ) - 初コメです!ランキング1位に乗っていて、すぐに拝見させていただきました!めちゃくちゃ面白いです!かっちゃんも好きなのですが、及川も大好きなのでとても嬉しいです!更新頑張ってくださーい! (1月29日 13時) (レス) id: 55b59344d6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:げのげ | 作成日時:2024年1月28日 14時

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