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私は階段をくだり、左に曲がって突き当たりに扉を見つける。


裏庭へ直結している扉だ。


その扉を開こうとドアノブに手をかける。


しかし、外から声が聞こえてそれを捻ろうとした手は止まった。


聞き耳を立てるつもりは無いが、少し気になってその場に立ち止まる。



「ずっと前から好きでした…!よければ付き合って貰えませんか…?」




私は外から聞こえてきたそのセリフに1歩足を引いた。


しまった、私としたことが


及川が裏庭に行ってるって聞いた時点で察するべきだった。


流石に人の勇気を出した告白を踏みにじってまで及川に用があるわけじゃない。




すると、今度は及川の声が聞こえた。


「ごめんね、俺、好きな人いるから」



その言葉に静まるその場。


引き返そうにも足音を立てることは出来ないので私は硬直した。


とりあえず私は高く括った自分の髪の毛をクルクルといじる。


すると、女の子のすすり声が聞こえた。



「…もしかして、高嶺先輩ですか」


「この前一緒にケーキ屋さん言ってたって聞きました」



女の子の声はどんどん荒くなっていく。


それを見た及川は静かに呟いた。


「…そうだよ」




その時、私の胸はドキンと音を鳴らした。


なんだか急に息が詰まるような、自分がここにいないような気分になる。



及川が何に対して「そうだよ」と言ったのかは分からない。


玲奈と一緒にケーキ屋に行ったことに対してなのか


…好きな人は玲奈だということに対してなのか。



何故か私の心には一気に薄暗いモヤがかかったような気がした。





「まさかとは思ったけど、やっぱりAじゃん」


突然後ろから聞こえた声に、私はびくりと肩を揺らした。


振り向けば先程まで告白されていたはずの及川の姿。


「人の告白現場盗み聞きとかいい趣味してるよね〜」


『なっ…!たまたまだし!!』


一気に現実に引き戻された私は及川に対抗する傍らでふぅと息をついた。


「で?このイケメンな及川さんに何か用?」


『イケメンな及川さんに勉強教えて貰いたくて』


「あぁ、そんなことか!いいよ、近くのカフェでいい?」


『ほんとありがとなんか奢る』



私はあっさりと及川の了承を得た。


こう見えても及川は勉強はできる。


ひとまず中間は安心出来る。はず。




私は少し前を歩く及川の背中をぼーっと見つめていた。


さっき陥ったあの感情は何なのだろう。


『…』


私の心は霧に包まれたようにぼんやりとしていた。

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げのげ(プロフ) - ハルスケさん» ありがとうございます!とても励みになります🥹 (1月29日 17時) (レス) id: f5508f1222 (このIDを非表示/違反報告)
ハルスケ(プロフ) - 初コメです!ランキング1位に乗っていて、すぐに拝見させていただきました!めちゃくちゃ面白いです!かっちゃんも好きなのですが、及川も大好きなのでとても嬉しいです!更新頑張ってくださーい! (1月29日 13時) (レス) id: 55b59344d6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:げのげ | 作成日時:2024年1月28日 14時

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