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「で、何があったの」
伊野尾くんの作ったカフェラテは、俺好みに丁度よく甘くて美味しい。
カフェオレを一口、口に含んで「実は、」と話し始める。
花火大会の翌日は、昼からバイトだった。いいのか悪いのかわからないが、タイミングよくAちゃんも菊池も休みだったから2人には顔を合わせていない。松島は出勤だったから、顔を合わせたけど、なんとなく俺らの間には気まずい雰囲気が流れていて、そんな雰囲気を察知した伊野尾くんに閉店後、引き止められた。
Aちゃんを待たせて、飲み物を買いに行っている時。なかなかの人数が並んでいて、花火の開始時間に間に合うかな、なんて思いながら列に並んでいた。
『健人…?』
後ろから、名前を呼ばれてすぐにあの人だとわかった。好きで好きでたまらなくて、もう俺にはこの人しか居ないって、そう思っていたあの頃が一瞬で蘇る。
『…レイカ』
俺を呼んだその人は、紛れもなく、初めて俺が恋をした人だった。
彼女との出会いは、遡ること高校1年生の夏。
高校生になって通い始めた塾で、俺とレイカは出会った。レイカは伊野尾くんと同じ大学、つまり俺が今通っている大学に通っていた。もともと、伊野尾くんの紹介でで入ってきたレイカを一目見た瞬間、好きになった。一目惚れだった。
それから、塾で顔を合わせる度に、俺はレイカにアプローチし続けた。初めは相手にしてくれなくて、あしらわれてばかりだったけど、高校2年生の冬休み…クリスマスイブの夜、どうしても一緒に居たくて、送らせてくれと頼んだ帰り道、俺達は付き合うことになった。
『ねーねーレイカ先生いつになったら付き合ってくれんのー?』
『またそうやって大人をからかうのはやめて』
『からかってないし、本気だよ』
『本当に?』
『本当に、本気で俺はレイカ先生のことが好きだよ』
『…それじゃあ、本当に付き合ってみるー?』
今思えば、始まりはかなりふわっとしていたし、今まで断られ続けていたのに突然、しかもかなり軽い感じでレイカは付き合うことを了承した理由を、当時は嬉しい気持ちが強くて考えもしなかった。
後から伊野尾くんに聞いた話だけど、その頃はちょうどレイカが付き合っていた彼氏と別れた時期のようで、単にタイミングが良かったんだと思う。
付き合っているのに、いつも不安で、少しでも目を離したら居なくなってしまいそうな、そんな危うさが彼女にはあった。
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みゆ(プロフ) - ぷぅ∞さん» ぷぅさん初めまして!嬉しいお言葉ほんとにありがとうございます!これからも切なく甘くを目指して完結頑張るので応援おねがい致します! (2019年5月3日 19時) (レス) id: c270fe5c87 (このIDを非表示/違反報告)
ぷぅ∞(プロフ) - 初めまして。いつも更新を楽しみにしています。風磨くんの切ない恋にきゅんきゅんしています。更新頑張ってください! (2019年4月30日 18時) (レス) id: 0b53292451 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みゆ | 作成日時:2019年4月9日 22時