名無しさん【NJ】 (ページ9)

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#5 信じたくないのページ9

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それからナムジュンさんとは暫く会えずじまいだった

それこそこのまま会えないんじゃないかな、この間の食事で何かすごく私に気に入らないことがあったのかなと思うくらいには

全く来なくなってしまった

どれだけ考えても思い当たる節はなくて

だって彼は楽しかったと言ってくれていたし、なんならまた行きましょうってお誘いまでしてくれたのに

連絡先を交換しなかったことを今更だけどとても後悔した

私はそんな動揺を隠すようにただひたすら名無しさんの本を読み漁った

仕入先のお得意さんがこっそり教えてくれた

「今度名無しさんが新作出すらしいよ」

という情報だけが今の私の楽しみだった

ガタッガコンッ

「ヴッ」

うちの建付けの悪い引き戸が乱暴な音を立てる

もしかしたらナムジュンさんかも、なんて淡い期待を抱いたけど

そこにいたのは違う人だった

「あっ、う、こん……にちは？」

『…いらっしゃいませ……』

その人は少し吃って、それが恥ずかしかったのか俯いて耳を赤くさせていた

キョロキョロと店内を見渡して、ナムジュンさんがよくうろついていた図鑑の辺りを行ったり来たり

うーん、と唸ってはやっぱり同じところをさまよっていたからなんだか居た堪れなくなって

普段はこんなこと絶対にしないのに

『あの、なにかお探し…ですか』

「えっ！あ、ぅ……あの……」

段々と小さな声になって、大きな体を縮こませるから
怖がらせてしまったのかなって心配になった

「あの…〝ときめく雲図鑑〟っていうのを探してるんですけど」

『っ、あぁ……それならここに』

「あ！ありがとうございます！」

普段本屋さんなんて来ないから、と先程とはガラッと変わってニコニコ人懐っこい笑顔を浮かべている

「もしかして、貴方がAさん？」

『え…？なんで私の名前、』

「よく聞くんです。あ、今日はその人の代わりに来て……って違くて、あの、僕ジョングクです」

早口で捲り立てるように話すジョングクさんは、そういう所がなんだか私に似てるななんて思った

お互い人見知りってだけで、少し緊張が解けた気がした

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