名無しさん【NJ】 (ページ6)

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#4 私の過去ページ6

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「Aさんの話を、聞かせてくれませんか？」

日本のお酒もおいしくて、それなりに飲んでしまったからなのか

その言葉の色がとても優しい色をしていたからなのか

『聞いても、面白くないかも』

「大丈夫です。Aさんのこともっと知りたいから」

そう言ったナムジュンさんに、ポツポツと自分の話をしてしまった

母は自分の作法に厳しい人で何も出来ない私をよく叱っていたこと

父が厳しいおかげで学生時代は恋愛も趣味も許されず勉強ばかりしていたこと

勉強の合間に父の書斎に忍び込んで読む本が楽しみだったこと

それから……

『母の紹介で結婚した人は…その、』

その続きを繋げれば、彼の瞳には怒気が含まれていることに気づいた

あぁ、言うんじゃなかった

なんて後悔しても完全に後の祭りだった

「辛く、ないんですか」

彼は怒りと悲しさが混じった声でそう言った

『はい、全部私が悪いので』

なんでもない風に明るく声を出したつもりだったのに、彼には伝わらなかったみたいだ

「辛いなら声をあげなきゃダメだ。

助けを、求めなきゃ」

やっぱり彼は怒ってるみたいだった

そう自覚すれば、また何も言えなくなる

これは私の悪い癖だった

昔から思ったことを素直に表現出来ない性格だった

怒られても、それが理不尽なものであっても
『怒られている』という事実に足がすくんで言葉が出なかった

それを見て決まって人は『なんで黙っているんだ』とまた叱責した

それはまた私を黙らせてしまうのに

だけど紙の上では私は自由だった

言いたいことも、登場人物の言葉に乗せてしまえば簡単だった

そんなふうに、言いたかったけど言えなかったことを吐き出すように小説を書いていた

部屋にこもってひたすら机に向かって何かを書いている私を母は『変な子だ』と言った

それでも良かった

それが私の唯一の拠り所だったから