嘔 ページ24
信介さんが待つマンションへ帰れば、何やら忙しそうに書類とにらめっこ。
「ただいま帰りました、ってどうしたんですか」
「おかえり、大阪のマンションを10月いっぱいで売り飛ばすことにしたで。せや、申し訳ないけど3日ほど一緒に大阪で荷造り手伝ってくれんか」
「いいですよ。あ、でも」
フェス、どうしよう。大阪だったし、折角チケット買ったのに行かないのはもったいない。
信介さんに半日だけ自由時間を頂くのを条件に急遽大阪へ向かうことになった。
因みに会社のホワイトボードには"社長同伴の雑用(大阪)"と書かれてあるのを同僚に指摘され何やらかした、と質問責めになったのを信介さんは知らない。
一日目は分別をして、家具の解体作業。それを業者に受け渡す、の繰り返し。
大学生の頃から住んでいるというマンションらしいが、部屋も家具も綺麗で信介さんを改めて尊敬し直した。
2日目、お昼前までの作業で粗方片付いたので安心してライブに行けた。
そう、安心して行けた。だが、安心出来たのはそこまでだった。
自分がライブに行くということは、同じくチケットを持っている侑もライブに来る可能性もある。
それが頭からすっぽり抜けていたのだ。
それは唐突に。仲の良いフォロワーさんを同伴者にライブを楽しんでいた時の事だった。
前方に長身の金髪が見えた。見間違えるなんて事はない、なんせ7年も一緒にいたのだから。
いるんだったらLINEで言ってて欲しかった。もしかすると、侑は侑がいれば私は来ないと読んで送らなかったのか。いやそんな読みはどうでも良くて。
会ったらダメ、それしか考えられなかった。それは私が信介さんのお嫁さんである事と、私自身顔を合わせれば平然といられる気がしないということ。
それに絶対にあちらからのアクションがある。全面拒否されたら、きっともう、私は立ち直れない。
いくら毎日侑がLINEを送ってきてくれていたって、相手の本性なんてわかりっこない。
ただ、私は否定される事が怖いだけだけど。別の人の女になったお前に用はない、そう言われることが。
「ごめん、私気分悪いから後ろ下がってみてるね」
「え、あ、うん。気分良くなったら戻ってきてね」
そこに立っていられなかった。実際、侑を見つけてから何がこみ上げてくる感覚と、冷や汗が止まらない。
何かこの状況に恐怖を感じてしまった。
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狼 - 三角関係ってやつですねぇ…ヤバイですねぇいいですねぇ←(さいてi (2020年3月20日 21時) (レス) id: 58dc9d80b9 (このIDを非表示/違反報告)
本郷ゆい(プロフ) - ありがとうございます!!自分の中でもいかに北さんが喜ぶハッピーエンドというのが難題でした!最初から読んでいただけてるなんて、本当に光栄です。よろしければ少ないですが、小話と次作も読んでいただけると嬉しいです!! (2020年3月7日 23時) (レス) id: 36ee06747a (このIDを非表示/違反報告)
本郷ゆい(プロフ) - 紫乃さん» ありがとうございます、めちゃくちゃうれしいです。当方本当に語彙がないので、国語辞書を片手に執筆したかいがありました! (2020年3月7日 23時) (レス) id: 36ee06747a (このIDを非表示/違反報告)
本郷ゆい(プロフ) - 瑞稀さん» コメントありがとうございます。どうしてもここまで北さんについて深く掘り下げると、肩を持ちたくなりますよね!!小話では北さんに救われるよう書くので、楽しんでいただけたらと思います。 (2020年3月7日 23時) (レス) id: 36ee06747a (このIDを非表示/違反報告)
猫太郎丸 - 完結おめでとうございます!!!初投稿されたときからずっと見てた作品で毎回ムズきゅんされました…!侑くんも北さんも報われてほしくてでも作者さんの完結方法はとてもスッキリして今とても爽やかです!(?)改めまして本当におめでとうございます! (2020年3月7日 22時) (レス) id: 3db7769967 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:本郷ゆい | 作者ホームページ:http://nanos.jp/honngoyui/
作成日時:2019年11月11日 22時