嘘 ページ20
俺は彼女に嘘をつき続けている。嘘は嫌いだ。非合理的で、生産性もない冗談で人を傷付けてしまうかもしれないから。
その嫌いな嘘を、俺は吐き続けている。
かと言えば、俺は7年ほど前から小林Aという女性を知っている。
そして、その方が侑の恋人ということも知っている。
三年生の春高、烏野高校に負け部活を引退しても、未だ交流がある俺たち。うるさい双子がよく飲みに誘ってくるし、たまにバレーもするし、仲はいいと思う。
俺が大学二年生になってまだ間もない頃、一件のLINEの通知が始まりだ。
侑がグループに彼女が出来たと報告した事があった。そういうのは同い年だけで済ませんか、なんて思いながら祝福してやったのを、今でも覚えている。
否、正確にいけば、そこに送られてきた微笑む女性の写真をやけに忘れられなかった。
大学三年生の半年間、彼女が出来たことがあったが、なにか違う、そう心につっかえて別れてしまって以来、恋人はいない。
きっとそれはいつぞやの侑の彼女さんだったと気付いたのは、大学四年生。もう、卒業論文も提出し家でまったりしていた時だった。
時は過ぎ、社会人二年目。創立記念パーティーで彼女に出会ってしまった。もう随分としたの方にあったグループラインを開けば、髪型は違うものの、少し大人びた君だった。世界は狭いなぁ。
耳には社長の娘さんという話や、コネで偉い顔しとるなんて噂が入ってきた。だがしかし、一緒に仕事をしていく内に、どこまでも誠実で、努力家で。
侑はいい彼女をもったな、と感心すると同時に、どこかやるせなくて、憎たらしい気分になった。
そんな彼女が自分の下で喘いでいる。
涙を流して。
それが生理的に出てきたもんなのか、精神的に流れたもんなのか。どちらにせよ、俺が流させたに代わりはなかった。
「き....たさ...」
「なんや」
「ごめんな..さい」
お互い、一回果てて。ベッドの上でAさんは目を押さえていた。
「私、どうしたらいいか分からんです。もう、どうしたらいいか。侑が好きなんです、でも北さんと結婚は絶対。結婚するなら北さんの事、好きにならんといかん。いや、私は北さんの事好きになりたい」
「でも、なんやったっけ、侑が好きと」
今度は枕で顔を隠して頷くAさん。
今、俺はどんな顔をしとるんやろか。
次、俺はAさんにどんな言葉をかけるんやろか。
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狼 - 三角関係ってやつですねぇ…ヤバイですねぇいいですねぇ←(さいてi (2020年3月20日 21時) (レス) id: 58dc9d80b9 (このIDを非表示/違反報告)
本郷ゆい(プロフ) - ありがとうございます!!自分の中でもいかに北さんが喜ぶハッピーエンドというのが難題でした!最初から読んでいただけてるなんて、本当に光栄です。よろしければ少ないですが、小話と次作も読んでいただけると嬉しいです!! (2020年3月7日 23時) (レス) id: 36ee06747a (このIDを非表示/違反報告)
本郷ゆい(プロフ) - 紫乃さん» ありがとうございます、めちゃくちゃうれしいです。当方本当に語彙がないので、国語辞書を片手に執筆したかいがありました! (2020年3月7日 23時) (レス) id: 36ee06747a (このIDを非表示/違反報告)
本郷ゆい(プロフ) - 瑞稀さん» コメントありがとうございます。どうしてもここまで北さんについて深く掘り下げると、肩を持ちたくなりますよね!!小話では北さんに救われるよう書くので、楽しんでいただけたらと思います。 (2020年3月7日 23時) (レス) id: 36ee06747a (このIDを非表示/違反報告)
猫太郎丸 - 完結おめでとうございます!!!初投稿されたときからずっと見てた作品で毎回ムズきゅんされました…!侑くんも北さんも報われてほしくてでも作者さんの完結方法はとてもスッキリして今とても爽やかです!(?)改めまして本当におめでとうございます! (2020年3月7日 22時) (レス) id: 3db7769967 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:本郷ゆい | 作者ホームページ:http://nanos.jp/honngoyui/
作成日時:2019年11月11日 22時