【北信介】別の人の女になったで【宮侑】

謎 ページ2

一緒にご飯を食べて、一緒にお風呂に入って、一緒のベッドで寝る。

筋肉質な腕と胸板に包まれて寝る以上のリラックス効果を、私だけが味わえるっていうのが、こう、なんか、良き。






大学でモテモテな侑は、まぁ、それはそれは凄かった。大学の授業ほとんど寝てても、女の子が助けてくれるっていっても嘘じゃないくらい凄かった。

でも、良くわかんないけど、告白してくれたのは侑だし。同じ学科で、珍しい単位選択をしていた仲だから、っていうのもあるけど。

それからまぁ、私は侑大好きマンになったし、めでたしって感じで、めちゃ喧嘩するし、小さなことで喧嘩するし、エアコンのリモコンどこに置いたか忘れちゃっただけで、トマト缶投げ合うレベルで喧嘩するし。


でも、どんなことがあっても、侑といれば笑って終わるし、今もこうやって、一緒に寝れるのが、なによりの幸せだと思う。









だがしかし、そんな幸せも長く続く訳でも無く。唐突に終わりを告げた。

朝起きて、出勤して。社長室に呼ばれた。




勿論、室内にいるのは社長で、私の父で、私が最も恐れている人間だ。

「社長、何か」

「いや、今はお父さんでいい。...昨日、電話したにも関わらずでなかっただろう」

「昨日...？？洗濯まわして、早く寝たから」





そこに座れと客席を指され、静かに座ると、写真用の折りたたまれた色紙を手渡された。もうかれこれ8回目くらいだから、これが何を指しているかしっている。


お見合い。勿論、今まですべて突き返してきた。私には侑がいるから、と。





しかし、開いてみれば、そこには上司の写真と名前。直属の上司ではないけど、いくらか仕事をご一緒させてもらったこともあるし、お酒も飲んだ仲だ。

××株式会社 専務取締役 大阪支店長 北信介



「なんで、だんで北さん...！？」

「毎回Aがお見合いを断るからだろう。もう25になるし、俺も体裁として結婚してくれないと困るんだ」

「だから...何回言ったら分かるんや！！私には侑がいるって。私は宮侑と結婚するねん！」

「宮侑っていうやつがどんなやつかは知らん。でが、未来の知らぬバレーボール選手なんかとの結婚は認めないからな。それに比べて北君は俺の後釜を頼もうと思ってるし、もう本人にも確認済みだ」



お断りの連絡、入れておいてください。そういって部屋を出る。


いや、出たかった。




扉を開けた先に、北さんがいたから。

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