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──5年前
これは、後に『渋谷女児誘拐事件』として世間に語り継がれる事件の概要である。
発端は5年前の12月24日に学校帰りの女児が誘拐されたこと。
捜査一課にある特殊事件捜査係が招集され、すぐに捜査本部が作られた。
当時2年目の新米刑事として東都内を駆け回っていた有村Aも、先輩刑事に連れられて捜査に加わっていた。
「先輩…手がかり、見つかりませんね…」
「そうね。でも、被害者遺族のためにも私たちが諦めるわけにはいかない」
事件が起きて数ヶ月経った頃、ほとんどの警察関係者は諦めていた中、彼女とその先輩だけは捜査を続けていたという。
そんなある日、先輩が姿を消した。
焦ったAはかつての友人や先輩、後輩、更には街の人にまで聞き込みをする。
顔写真と名前を告げても、全員首を横に振る。
捜査の仕方や世間の生き方を教えてくれた先輩は、Aにとっては実の姉のような存在。
「先輩……」
1人になった部屋でぽつり、と呟く。
どうしようも無い寂しさが心を支配した。
それはまるで、2年前に起きてしまった同期の殉職事件の時のよう。
ピッ、と携帯を操作してみればメールの画面が映る。
To:有村A From:萩原研二 の文字の後に続く言葉はこうだ。
Aちゃん
俺は君のこと、尊敬してたよ
たった一言、それだけ。
たくさんの女性に愛の言葉を囁いていた彼は、本当に好いていた人には中々素直になれない人間だったらしい。
しかし、そんなことAは知る由もなく。
「ハギくん……松田くん…伊達くん…ヒロくん…。……ゼロ、くん…」
同期の名前を次々につぶやく。
1人は殉職、2人は消息不明。
おそらく2人は公安等の身分を明かせない部署にいるであろうことは、予想出来ていた。
それでも大事な時に会えないことが寂しくてたまらないのだ。
卒業して以来会えたのは1日だけで、去年の萩原の命日。
過去の思い出に思いを馳せていた時、携帯の通知がAの意識を引き戻した。
「っ…!?」
ジャケットを引っ張り、家を飛び出す。
女は預かった
返して欲しければ指定した場所まで来い
このメールが罠だなんてこと、分かってる。
それでも先輩に会いたい。
Aはその一心で米花町を走り抜けた。
着いた先は山奥の小屋。
ここに先輩がいる、そう思って彼女は拳銃をかまえながら小屋へと突入した。
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結衣(プロフ) - RIOさん» ありがとうございます!すみません、確認したのですがfryさんが警視庁に行く描写が見つからず…。宜しければ何ページにあったか教えていただいてもいいですか? (2022年6月26日 22時) (レス) @page6 id: 35e1b11f9c (このIDを非表示/違反報告)
RIO - めっちゃ面白いし感動しました!あの、一つ聞きたいんですが、降谷さんはなんで警視庁に行かれるんですか?仕事関係なら警察庁だと思うんですが、、警備企画課ですし、、 (2022年6月23日 1時) (レス) @page16 id: 759836d8d0 (このIDを非表示/違反報告)
ヤギ(プロフ) - 結衣さん» 承知しました!念の為削除しましたので残っていたら教えてください! (2022年4月30日 13時) (レス) id: 4a42e1cfde (このIDを非表示/違反報告)
結衣(プロフ) - 谷さん» ご指摘ありがとうございます。修正させていただきます (2022年4月29日 19時) (レス) id: 35e1b11f9c (このIDを非表示/違反報告)
結衣(プロフ) - ヤギさん» ご指摘ありがとうございます。後々のこともあるので今回は目を瞑ってくださると幸いです… (2022年4月29日 19時) (レス) id: 35e1b11f9c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:結衣 | 作者ホームページ:
作成日時:2022年4月27日 0時