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少し切れた息を整えながら、カメラに向かってお辞儀をする。
目の前の客席にはたくさんの人が居て、この中に私のファンの人だったり、ヨーコちゃんのファン、他の出演者さんのファンがいるんだと思う。
ドレスを翻して舞台袖に捌ければ、未華子ちゃんがタオルを持って走ってきた。
「ありがとう」
「なんか今日気合い入ってなかった?」
「…そんなこと、ないもん」
水を1口飲みながら、疲れか照れか分からない頬の赤さを隠しながら控え室へ向かう足を進める。
未華子ちゃんは多分後ろでニヤニヤしてると思う。
声色がちょっと上ずってるから。
「Aちゃんっ!」
「わっ、ヨーコちゃん…!」
ぷんすかと怒りながら控え室の目の前まで来ると、後ろからヨーコちゃんが駆け寄ってきた。
どうしたの、と聞けば写真が撮りたいと返ってくる。
それを快く了承して、未華子ちゃんに3枚ほどツーショットを撮ってもらった。
「ありがとうございました!」
「こちらこそありがとう」
またね、と手を振り合いヨーコちゃんと別れる。
彼女の背中が見えなくなると、曲がり角の向こうでわっと声が上がった。
聞こえてくるのは毛利さんのメロメロな声。
あ、確か毛利さんってヨーコちゃんのファンだったっけ。
あそこに安室さんもいるのかな…なんて考えがぽんっと浮かんだ。
「あーん…!大好きな安室さんがヨーコちゃんに取られちゃうー!」
「……未華子ちゃん何言ってんの」
「あら、違った?考えてたこと」
体をくねくねさせて私の真似(そんなこと考えてないけど)をした未華子ちゃんの肩をパシッと叩く。
別に大好きでもないし取られちゃうとも思ってないし…。
「〜っ着替えてくる!」
「はいはい。外で待ってるから」
タオルと水を未華子ちゃんに渡し、控え室のドアをバタンと閉じる。
私は、私が好きなのは、れーくんだもん。
未華子ちゃんは何を勘違いしてるんだか。
鏡の前に立ち、背中に手を回してドレスのチャックを下ろす。
普通こういうのって誰かに頼むものなんだろうけど、あいにく身体が柔らかいから1人で出来てしまった。
ドレスから腕を抜こうと体をひねれば、テーブルの上にポツンと封筒が置かれてある。
なんだろ、これ。
「…?」
腕を戻してその封筒を手に取る。
真っ白な封筒は、少しだけ重かった。
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天音(プロフ) - すごく面白くて、読んでてドキドキしました!ゆっくりでもいいので、更新待ってます! (2022年7月17日 19時) (レス) @page17 id: 36647ec52c (このIDを非表示/違反報告)
まみこ(プロフ) - 頑張ってください!! (2022年7月17日 13時) (レス) id: 9d3f4398ec (このIDを非表示/違反報告)
まみこ(プロフ) - 面白いです、応援しています!!更新待ってます (2022年7月17日 13時) (レス) @page17 id: 9d3f4398ec (このIDを非表示/違反報告)
結衣(プロフ) - アリスさん» ありがとうございます! (2022年4月29日 19時) (レス) id: 35e1b11f9c (このIDを非表示/違反報告)
アリス - 面白いです!ゆっくりでいいので更新頑張ってください (2022年4月23日 19時) (レス) @page19 id: 99e1269188 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:結衣 | 作者ホームページ:
作成日時:2022年4月16日 23時