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北斗side
ーヒュッ…ケホッケホケホ…
「もー、なにやってんの…。」
処置室に響く咳の音に気が付いてベッドを覗くと、酸素マスクを首にぶら下げた不良患者が今にも起きあがろうとしていた。
京本「ッハァ、ほく…な、んで、?」
「いいから、まだ酸素着けてて…。点滴入れてるけど、まだイヤな感じある?」
京本「これ、ヤダ…。」
もぉー!
質問に答えないうえに、酸素マスクを近づけるとイヤイヤって手を動かすって何!?ガキなの?
「あーもう!そんな動いたら針ズレるでしょ!痛い思いするの京本なんだからね!せっかくジェシーがっ…」
高地「北斗。お前が興奮してどうすんの?大我も。我儘言わないで大人しくしてなさい。また発作起きたら風磨のところ搬送するからね?」
あと、ここ病院。お前らうるさい。
ピシャッと俺たちに注意した高地が出ていった後の空気ったらない。
京本「ね…ジェシーがどうしたの…?俺…ケホケホッ、ぜったいなんか、したでしょっ!」
「や、なんもない…。心配してるって言おうとしただけ。とにかく、京本は点滴終わるまでゆっくり休んで?ほら、目閉じて。」
ムキになった自覚はある。
言わなくていいことを言った自覚もある。
分かってるから見るなって!
背後から高地の視線を感じながら、ねぇねぇってうるさい京本の目元を手で覆う。
小っ恥ずかしいけどこれが1番効くんだよ。
点滴がついてるのに動き回る左手も、今日は特別に捕まえてやる。
何も心配せずに寝ろ。
.
バシッ!
「ったぁ!!!」
高地「それでチャラな。っんとに、お前までムキになってどうすんだよ。ほら、次はこっち、お願いしますね。」
シャーっと開けられたカーテンの先、ベッドに横になるジェシーの目からはとめどなく涙が流れていた。
「なぁに、まだ痛い?」
ジェ「んっ…ん!たい、がっ!たいが…!」
「はいはい、俺で我慢してくださーい。」
ぐすぐすと泣くジェシーが京本を呼ぶのは、目の前で喘息発作を起こした姿を見たからで。
かわいい顔の左半分が大きな湿布で覆われているのは、麻痺が強い身体を必死に動かして俺らの助けを呼んだから。
「京本のヒーローになってくれてありがとね。」
ーほんと、ありがとうね。ジェシー。
そんな彼の、とめどなく溢れる涙を止めたのは、凛とした声の京本だった。
お互いが、お互いのヒーローってわけか。
今だけは、袖が伸ばされたトレーナーの赤い染みには、目を瞑ろう。
後で覚えてろよ。
.
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雅(プロフ) - 更新ありがとうございます!次回も楽しみに待っています (5月5日 22時) (レス) @page35 id: a83a9d93f0 (このIDを非表示/違反報告)
雅(プロフ) - 更新ありがとうございます!そして、感動をありがとうございます! (8月16日 19時) (レス) @page30 id: 7007161c36 (このIDを非表示/違反報告)
結夏(プロフ) - 更新ありがとうございます!!ほぼ毎日何度も何度も読み直しています!きなりさんのお話大好きです!応援してます! (8月16日 6時) (レス) @page30 id: 27b7b36f37 (このIDを非表示/違反報告)
遥(プロフ) - 数日前からまた1から読み返していたばかりだったので、新しく更新されていてとても驚きました!!すごく嬉しいです🥰これからも無理のない程度に楽しみながらお話をあげてくださると嬉しいです!応援しています🫶 (8月16日 1時) (レス) @page30 id: c72fa43d6e (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望 - 更新されたこと、とても嬉しいです。ありがとうございます。きなりさんのペースで、また物語を紡いでくれたらと思います。 (8月15日 23時) (レス) @page30 id: 607ec5cd06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなり | 作成日時:2022年6月20日 20時