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北斗side
いつもよりいくらか早いスピードで上下する小さな胸に、聴診器を当てていた樹の顔が曇る。
田中「怪しいなぁ…。熱は?」
森本「上がった。ジャスト38℃」
ベッドの背を最大限に起こして、前屈みになってもなかなか改善されない呼吸苦に、ジェシーの瞳からほろっと涙がこぼれる。
「苦しいな…。ちょっと頑張って痰出してみような?背中叩くからねー。」
ンッ…ゲッホゲッ…
ハッ…ハァッ…ッヒ…
森本「焦んないよ〜、上手に出せてる!ジェシーすごいなぁ〜、ぜろぜろしてるの全部出しちゃおうな?」
苦しさからパニックになりかけるジェシーを、慎太郎と2人で包みこむ。
必死に咳き込んでくれてるんだけど、弱った身体に麻痺まで邪魔して思うように去痰できないのがもどかしい。
田中「っし、北斗はクリニックから酸素持ってきてくれる?慎太郎はごめんだけど車出してもらっていい?救急行こうか。」
聴診してからしばらく無言だった樹がそう言って、一気に家の中が慌ただしくなる。
キーを持って駆け出した慎太郎に続くように、俺も言われた通りに酸素を抱えた。
高地「とりあえず3日分くらいの荷物入ってる。また足りないものは後から持っていくから。ジェシーのこと、頼みます。」
家を出る直前、高地から大きなリュックと大きなおさるのぬいぐるみを受け取った手は、情けないくらいに震えていた。
田中「だーいじょうぶ。心配すんな。」
酸素マスクをつけたジェシーの顔を覗き込んで、ついでに俺の手も握って、そう呟いた樹。
着いていくって決めたのは自分だから。
ーほ、ほくっ…ハァッ…
ストレッチャーに乗せられたジェシーが伸ばした手を、優しく握って笑う。
「大丈夫。待ってるからね。」
離れた温もりの代わりに、力強い衝撃が肩に走る。
ジェシーのこと、お願いします…。
スクラブを靡かせて走り去った元上司が、痛いくらいにかっこよかった。
.
にぎにぎ…
ぽすっ…
ぎゅうー。
あいつの分身を自分の膝ごと抱きしめないと保っていられない感情を、必死に奮い立たせる。
田中「ふっ…。今日は北斗の猿なの?」
「…んーん。ジェシーの代わりにお世話してんの。」
田中「そ。ジェシー、ほぼ確定だけど…肺炎疑いで入院になった。このまま慎太郎と病棟あげるけど、お前どうする?」
「んー。ちょ、っと顔見てから帰ろうかなぁ。」
頑張ってるあの子に負けないように。
俺も勇気をだしてみよう。
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雅(プロフ) - 更新ありがとうございます!次回も楽しみに待っています (5月5日 22時) (レス) @page35 id: a83a9d93f0 (このIDを非表示/違反報告)
雅(プロフ) - 更新ありがとうございます!そして、感動をありがとうございます! (8月16日 19時) (レス) @page30 id: 7007161c36 (このIDを非表示/違反報告)
結夏(プロフ) - 更新ありがとうございます!!ほぼ毎日何度も何度も読み直しています!きなりさんのお話大好きです!応援してます! (8月16日 6時) (レス) @page30 id: 27b7b36f37 (このIDを非表示/違反報告)
遥(プロフ) - 数日前からまた1から読み返していたばかりだったので、新しく更新されていてとても驚きました!!すごく嬉しいです🥰これからも無理のない程度に楽しみながらお話をあげてくださると嬉しいです!応援しています🫶 (8月16日 1時) (レス) @page30 id: c72fa43d6e (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望 - 更新されたこと、とても嬉しいです。ありがとうございます。きなりさんのペースで、また物語を紡いでくれたらと思います。 (8月15日 23時) (レス) @page30 id: 607ec5cd06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなり | 作成日時:2022年6月20日 20時