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京本side
「おまたせ、お昼ごはんでーす。よく噛んで、ゆっくり食べようね。」
なんて俺の声は、目の前のAに届いていない。
配膳されたと同時に、いつもとは比べ物にならないスピードで食べ始める姿に苦笑いを浮かべつつ、忙しく動く手を止めてやる。
「こらこら…。ゆっくり、よく噛んでって言ったでしょ？ご飯は逃げないから、たいちゃんと一緒に食べようね。」
一旦食事の乗ったテーブルを足元の方へ動かすと、あぁ！って声を出してまんまるの顔を歪めるA。
A「たいちゃんのいじわるっ！ご飯！Aのご飯…！食べるのー！お腹すいたのぉ！ｯｹﾎ…やぁだ！かえして！」
「ん〜？そうねぇ、お腹すいたもんね。ほら、あーんして？たいちゃんとゆっくり食べようよ。」
そう言ってスプーンに少量のお米を乗せて口元に運ぶと、ぱくんと食べる。
もぐもぐ、かみかみしてね？って声をかけると、素直に口を動かすんだから、なんだか赤ちゃんみたいで可愛いよね。
そうやって一口ずつ、時間をかけて食事を終えたAは満足したのか、すぐに夢の中へ…。
Aを少しだけ幼くして、食欲を増進させて、顔をまんまるにして、心をずーんと重くする。全ての原因であるステロイドが、しっかりとAの腕に繋がっていることを確認して、病室を後にした。
田中「おつかれ。昼飯どうだった？」
「勢いよく食べ始めたから取り上げたら怒られた。たいちゃんのいじわるー！だってさ。」
ため息混じりにそう言うと、ハハって楽しそうに笑う樹。笑い事じゃないし！
田中「ま、少しずつ減薬する予定だから、あと少しだけよろしくでーす。」
ひらひらと手を振ってナースステーションを出て行った樹は、どうせAのところに行くんだろう。
長期的なステロイド治療を始めた途端に、鬱の傾向が出たり過食気味になったり不眠になったり…。
今回の減薬は、喘息が良くなったからってよりかは副作用が酷くて薬が合わないからって理由なのが悔しいところ。
セオリー通りに進まないことなんて良くあることだけど、早期退院を目標にしていた樹としては、思うところがあるんだろう。
だからこそ、樹が選んだ新しい選択が上手くいくことを願うだけだし、俺はそのためになんでもするって決めたのよ。
お金がかかる？
んな意見、クソくらえ。
大事な命救えるんなら、趣味のひとつやふたつ、くれてやる覚悟だわ。
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みーちょん(プロフ) - いつも読み直しては癒されてます!!素敵なお話ありがとうございます!!!! (2022年3月22日 9時) (
レス) id: 61a5c2e382 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きなり | 作成日時：2022年1月30日 0時
