泣き笑って憂いた未来 ページ30
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なんで？
いつもみたいに、退院じゃないの？
ちょうどもうすぐ夏休みだしって、なにがちょうど…？
田中「A。」
「やだ。」
田中「やだじゃないの。」
「絶対にいやだ。」
田中「今はお休みする時間。お前どんだけの期間意識なかったと思ってんの。無理してもいいことないって分かってるでしょ？」
「こんなの、なくて大丈夫。ずっと寝てたから、お休みいらない。ﾊｧｯ…もう、だいじょぶ！ほら…ねっ…？」
高地「いい加減にしなさい。寝てたんじゃなくて、薬で眠らされてただけ。酸素外したらすぐに苦しくなるのは、まだAの身体が休んでほしいって言ってる証拠。」
こっち向けって顔を掴まれて、無理やりつけられた酸素マスク。
大丈夫って笑って外したのに、これがないと満足に呼吸もできないなんて。
田中「新学期には間に合うように、1ヶ月半で退院を目標にしよう？」
田中「大丈夫、神様は超えられない壁は与えないから。」
な？
そう言って頭を撫でられても、納得できるわけない。こうやって休んでる間に周りは必死に勉強してるはず。
これじゃ壁を越えるための準備もできないじゃん…
そんなの…
「そんなのっ！そんなの無理に決まってるじゃん！！Aのっ！Aの神様はｯ！いっつも…いじわる、するｯ！…っ！…」
樹くんに私の気持ちなんか分かんないんだ！！
酸素マスクを外して力いっぱい投げつける。
目の前の樹くん目掛けて、私の悔しさが伝わるように。
私をここに縛りつける点滴も、べったり貼られたテープを無視してチューブを握りしめたまま引っこ抜く。
ベッドを降りてドアを開けて、帰るんだから。
そう、思ってるのに…。
現実の私が投げた酸素マスクはポスンと布団の上に落ちただけ。点滴も中途半端に繋がって、寝たきりで弱った足じゃベッドの下で座り込んだまま動けない。
「も、ぜんぶｯやだ…！ﾊｧｯ…なん、で！Aだけ、こんななのぉ…！」
やっと夢が見つかったのに、やっと友達と一緒に頑張ってこれたのに、やっと…やっと…
ドラマのヒロインみたいに、大声出して泣き叫びたいのに。
それすらも許されない私の喉からは、ひゅーひゅーと風の吹く音しか聞こえない。
あんなに突っぱねた樹くんに縋りついて、こーちに支えられないと生きてられない私なんだよ。
駆けつけた慎ちゃんにそんな顔させるのも、たいちゃんに下手くそな笑顔をさせるのも、ぜんぶぜんぶ私なんだ。
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みーちょん(プロフ) - いつも読み直しては癒されてます!!素敵なお話ありがとうございます!!!! (2022年3月22日 9時) (
レス) id: 61a5c2e382 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きなり | 作成日時：2022年1月30日 0時
