STory 6 (ページ29)

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京本side

「おはよ、A。」

出勤してすぐ、ナースステーション横の重傷個室に入れば、酸素マスクをつけているもののスヤスヤと穏やかな顔で眠るAがいた。

櫻井先生や風磨たちに見送られて、ICUを卒業したのが昨日。
挿管が外れたものの、まだまだ予断を許さない状況のお嬢さんはここに来てからも、夜中に小さな発作を繰り返していたらしい。

夜勤の看護師から引き継いで朝のバイタルチェック。

ちょこっと昨日より熱が高めだけど、許容範囲かな。
青白い頬を、少しでもよくなりますように…と願いを込めて撫でると、ゆっくりと目が開いた。

「ごめん、起こしちゃったね。おはよう、今日はいい天気だよ〜。」

そう言って病室のブラインドを開けると、眩しかったのかキュッと目を細めた後、気持ちよさそうに微笑むA。

A「たー、ちゃ…。っ、ぁよ、っ、」

「おはようA。上手に言えたじゃん。えらいえらい。」

挿管チューブを抜いた後、スムーズに声を出すのが難しかったけれど、ちょっとずつ回復しているようで俺らも本人も少し安心してるんだ。

こうやって綺麗な音にならなくても、伝えようとしてくれるから嬉しいよね。

「後からまた来るからね、ゆっくりしてて？なんかあったらコールね。ここ、手の横に置いてるからね？」

A「ぁーい。ま、たね！」

ナースコールを握らせた手をゆっくりと振るから、俺も手を振って忙しい朝の業務へと足を進めた。

田中side

午前の外来を終えてAの顔でも見に行くか〜って思ってたら阿部ちゃんからのヘルプコール。

急いで病棟に戻ると、聴診しなくても分かるくらいの酷い喘鳴が聞こえて、目があった阿部ちゃんと思わず苦笑い。

森本「あ！樹きた〜！A？樹来たから約束。ね？樹とお薬頑張るんだもんねー？」

「よんだー？なーに、俺のこと待ってたの？ごめんごめん、お待たせしました〜！」

正直頭の中はハテナでいっぱいだけど、どうせAがイヤイヤ言ったんだろう。

完璧に準備されたネブライザーを持って、Aの口元に当てると抱っこしろと言わんばかりに手を広げるお嬢さん。

「甘えんぼAちゃん、しょうがないですね〜！」

ベッドの上に乗ってAを後ろから抱えるように座れば、コテンと体重をかけられる。

阿部「あはは！嬉しそうな顔〜！今度は俺でも我慢してね？」

笑ってそう言う阿部ちゃんに首を振ったAは、今度こそデコピンの刑となりましたとさ。

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