STory 6 (ページ22)

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北斗side

「んで？なにが不安なの。ひとりでイライラしててもいいことないでしょ？」

あれから俺のトレーナーをびしょびしょに濡らしたAにそう聞くと、出てきたのは一枚の紙。

あー、この時期にこれは…な。

大きく書かれたC判定の文字と、頑張りましょうのコメントが、Aの心をじわじわと追い込んでいた。

A「こないだの、模試、手応えあったのに…。大ちゃんは夏休みの補習で挽回すれば良いって言うけど。言うけどさぁ…！」

そう言ってまた涙を浮かべるAの呼吸は、ちょこっと怪しくて。ベッドの上に転がっていた吸入器を片手で手繰り寄せる。

「ちょいちょいAさん、一回お薬吸おう。ぜーぜー聞こえてますよ〜。」

そりゃピークフローの数値も安定しないはず。

ーもう、ないから…。

気まずそうなAの声を聞きながら、残量ゼロの吸入器を見て俺が白目むくまで、3秒前。

高地の逆鱗に触れるまで、5分前ってとこ…？

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高地「ほんっと、信じられないから！新しい吸入渡したの、ついこの間だからね！？どういう計算したらもう無くなるのか説明してほしいわ！」

田中「ちょっと…起きるから。気持ちはわかるけどさー。」

結局あの後、樹と高地を呼んでネブライザーで対応したけど治まらず…ステロイドの点滴を打って、どうにか落ち着いた。

案の定、高地の逆鱗に触れたようで、わりと大きな声で怒鳴られるけど、当の本人は発作の疲れもあって爆睡かましてる。

「ん、これ。今まで悪くてもB判定だった分、夏休み前にこの結果はグサッときたんだろうね。まぁ、まだ焦る時期じゃないって、俺たちは分かるけど本人はね…。難しいとこだよなぁ。」

模試の結果を見せれば、俺なんてもっと酷かったよ？って笑う樹だけど、そう気楽にいけないのがAなんだよなー。

高地「あー、嫌な予感しかしない。こわい、怖すぎる。」

田中「んまぁ、来週には夏休みに入るわけだし。思い切って補習は保健室で受けさせてもらうのもアリかもなぁ…。」

「ん。要相談、だね。」

Aの部屋を後にしてリビングに降りると、ぽつんとソファーに蹲る子犬…。

ぐすん…ぐすん…

なーんで寝てないのよ？何時だと思ってんの…。

ジェ「A、おこってた…？ぜんそく、おれのせい…」

「んーん。色んなこと、頑張りすぎちゃっただけよ。ほら、明日もラウくんとご飯食べるんでしょ？早く寝なきゃ！」

ほんっとに、手のかかる姉弟だこと。

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