3 ページ29
北斗「ほんと?本当についていかなくて大丈夫なのね…?」
「うん、もう大丈夫だから。電車はこの間も乗ったし、学校行けばひーくんいるから。」
お仕事はもう始まってるはずなのに、そばにいてくれたほくちゃんの優しい提案。ついてきてって言いたい気持ちをぐっと堪えて笑う。
学校ついたらメールの約束をして、ほくちゃんはクリニックへ。
すでに9時半を過ぎていて、今から急いでも約束の時間には間に合わない…。
遅れるってメッセージを送って、私も早足で家を出た。
.
照side
保健室でのんびり過ごす朝。
Aの好きなお菓子を用意してるあたり、俺もいよいよだなって思うけど、目の前のソファーでうたた寝する大野先生も、いよいよだな。(笑)
そんな時に入った北斗からのメッセージ。
大野先生にも見せると、苦笑いを浮かべて保健室を出て行った。
俺は、寒空の下ひとりでやってくるAを思って、暖房の温度を上げることしか出来なかった。
.
高校の最寄り駅について、ふぅっと息を吐く。
ほくちゃんが選んでくれたセーターの袖をグッと伸ばして身も心も強くバリアを貼る。
授業中の学校はしーんとしていて、なんだか自分が悪いことをしている気分。
久しぶりの登校だけど、下駄箱はそのままになっていて、私の上履きも事故の日のまま、そのまま。
授業中の廊下を私服で歩く人がいたら、私でも見るもんな…。
ビシビシ感じる視線と、コソコソ聞こえる話し声。
"あれって1年の子?"
"休んでんのかな…?"
"なんか事故ったらしいよ〜"
"家族が事故ったんじゃなかったっけ?"
"弟だけ助かったらしいね"
"かわいそー"
なんで保健室は廊下の先にあるんだろう。
歩いても歩いても、聞きたくないのにきこえてくる。
何も知らないくせに、何も、なにも…
ようやくたどり着いた保健室の扉を開ける頃には、必死に作ったバリアがぼろぼろに壊れていた。
照「おはよう、A。」
大野「おう、ここ座れ。」
2人の優しい笑顔を見た瞬間に、がらがらと崩壊したバリアは涙となってこぼれ落ちた。
頑張ったな、よく来たなって撫でてくれるひーくん。
ほら、これ飲めってココアをくれる大ちゃん。
それでもさっきの冷たい視線を忘れられなくて。同情の言葉を忘れられなくて。
今までどれだけの優しさに守られていたのかを。
私にとっては人生を変える出来事でも、他人にとっては所詮他人事なんだって。
改めて、突きつけられた気がした。
596人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きなり(プロフ) - こころさん» 嬉しいコメントありがとうございます…!!こうして言葉で伝えてくださると、とても励みになります^^楽しんでいただけるように、頑張ります。今後もよろしくお願いします! (2021年9月14日 22時) (レス) id: d102b3716c (このIDを非表示/違反報告)
こころ - いつも楽しく読ませてもらっています!毎日更新されるのが楽しみです。これからも更新頑張ってください! (2021年9月13日 21時) (レス) id: b96a3cc535 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きなり | 作成日時:2021年8月28日 23時