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森本side
ハンバーグを見つめていたAちゃんが、徐にスプーンを持ってひとくち食べた。すぐにサラダもひとくち。
昨日の夜おじやを吐いて、朝の診察であんなに胃痛を訴えて。スープを飲むのもやっと。樹の診断はストレス性の胃炎、それも重度の。
看護師として、固形物を食べることは止めるべきだってわかってるけれど、最期の思い出を噛み締めるAちゃんを前にして、そんなこと出来なかった。
それに。
彼女の身体もひとくちが限界だと、震える手を見て悟った。
.
ママのハンバーグの味。パパのサラダの味。忘れないように、ちゃんと食べたくて。
ジェシーが元気になったら、作ってあげたい…!
震える手で口を抑えて、必死に飲み込む。と、同時に戻ってきそうな波をもう一度飲み込む。
慎ちゃんが渡してくれたお水をゴクゴクって飲むと、やっとお腹に入ってくれた…。
「っはぁはぁ、ハァーハァーっふぅー」
森本「ちょっと疲れたね。あとは俺がやっとくから、ちょっとソファーに座ってな、ね?」
お言葉に甘えて、ソファーに座る。
もう、雪だるまは溶けてなくなっていた。
森本「Aちゃん、起きて〜。病院着いたよ。」
慎ちゃんの言葉に飛び起きる。ほんとだ、病院の駐車場…。
森本「よく眠ってたから、そのまま連れてきちゃった!荷物は全部積んでるから、このままふっかのとこいこうか」
はい!って笑顔で差し出された手を取って、慎ちゃんとふっか先生が待つお部屋へ向かった。
深澤「昨日ぶり〜!Aちゃん、ちょっと顔色良くなったねぇ!高地から聞いたよ、あの家にいるなら俺も安心。」
ふふふって笑うふっか先生は、さっそくだけどって難しい話を始めた。
事故の保険金のこと、ママとパパの葬儀費用に医療費のこと、ジェシーの手術の同意書のこと、ジェシーの入院費治療費のこと、それから今住んでいる家のこと、私のこと…。
とりあえずお金のことは難しくて。全部ひとつの口座にまとめることにしようってふっか先生の提案に頷く。
ジェシーのことは、みんな諦めてないからって、長期入院を前提に考える。高額医療には補助金がおりるから安心していいって言われたけど、多分いずれは足りなくなる。
リハビリができるようになったら、院内学級もあるからねって慎ちゃんが教えてくれて、学校が大好きだったジェシーだから、喜ぶだろうと思った。
深澤「それでね、後はAちゃんのこと。俺は遺された人がどう生きていくか、それが1番大事だと思ってる」
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うる(プロフ) - はじめまして。この小説が大好きで、涙が止まらなくて、最新話まで1日で読み切りました。読み返したいと思う程でまた最初から読み返しています。これからも作者様の書く小説がゆっくりでも更新されるのを楽しみにしています。素敵なお話をありがとうございます!! (2021年10月5日 16時) (レス) @page17 id: 40a0db498e (このIDを非表示/違反報告)
きなり(プロフ) - みーちょんさん» はじめまして。嬉しいお言葉ありがとうございます!わっしょい!(笑)続きもよろしくお願いしますー! (2021年9月23日 10時) (レス) id: d102b3716c (このIDを非表示/違反報告)
みーちょん(プロフ) - 初めまして!題名に目を惹かれて読み始めましたがもつ涙が止まりません!素敵なお話ありがとうございます。そして倒れるとか苦しいのとかわっしょい!!といいますか…あの看病される系のお話大好きなので嬉しいです(語彙力)続きも読んできます! (2021年9月22日 3時) (レス) @page46 id: 61a5c2e382 (このIDを非表示/違反報告)
きなり(プロフ) - シヤさん» はじめまして。コメントありがとうございます(泣)シヤさんの言葉に泣きそうです…!!ご期待に添えるよう、ただいま続編制作中です!しばらくお待ちくださいねー! (2021年8月15日 8時) (レス) id: 3cf7c41044 (このIDを非表示/違反報告)
シヤ(プロフ) - まじで涙出てきました深夜に1人で号泣してます、、笑 続編楽しみにしてますね!作者様のペースで体調に気をつけて頑張ってください応援してます、! (2021年8月15日 3時) (レス) id: 3e44318467 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなり | 作成日時:2021年7月28日 0時