Page9：ドストエフスキー(前編) ページ9
コトン
花瓶が置かれる音で私は目を覚ました。恐らく今は朝、だと思う。天井や壁はコンクリートで窓が無いため、今が朝なのか分からないのだ。
「Aさん、おはようございます。今は朝ですよ」
『おはようございます、ドストさん。今日はテッセンの花なんですね』
「はい、綺麗でしょう？」
『とても綺麗です。』
この人はドストエフスキーさん。私をこの部屋に連れてきたのも彼だ。彼曰く、私は道で倒れていたらしい。
『でも、記憶は戻りそうにないです。』
「無理に思い出す必要はありませんよ」
私は記憶喪失なのだ。自分の名前は分かるが、過去の事は何一つ覚えていない。家族も、趣味も、何もかも。気づいたらこの部屋にいた。
「朝食はそこに置いてあります」
『毎日ありがとうございます。私なんかの為に…』
「僕が好きでやっていることですから。逆説、僕は仕事があるので行きますが…絶対に部屋から出ないでくださいね。」
『はい、分かってます。』
彼は朝と夜に私のところに来る。しかし仕事に行く前に毎日、部屋から出てはダメだと私に言うのだ。
幸い部屋は窓がないだけで、それ以外は充実している。
『…でも、やっぱり記憶は思い出したいな』
ドストさんが出て行ったドアを見つめる。何故部屋から出てはいけないのだろう。外に手掛かりがあるかもしれないのに。
『外に出てみたいな…今日の夜、ドストさんに交渉してみよう。』
案外、優しい彼なら許してくれるかもしれない。
「ダメです」
夜、私はドストさんに外に出たいと訴えた。しかし、返事はとても冷たいものだった。
『…なんでですか。』
「(名前さん)、言ったでしょう。貴方は僕に守られているのです」
『でも、記憶が戻るかもしれないんです』
「その根拠はありますか？」
『…無いです』
「ではダメです。そもそも、記憶が戻っても、貴方には何の得もありませんよ。」
『！？私の過去を知ってるんですか。どうして言ってくれなかったのですか！？』
「それは、僕が貴方は記憶を取り戻さないべきだと思っているからです」
『…？どう言う事ですか』
「貴方は知らなくて良いです…少し話しすぎました。」
そう言ってドストさんは出ていった。私には謎だけが残った。
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霞草(プロフ) - ありがとうございます！頑張ります (2月5日 18時) (
レス) id: bf2bd1b5e3 (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺 - ヤンデレは良いね、やっぱり。くにきぃだ君がヤンデレ…。めっちゃ面白かった (12月9日 21時) (レス) @page9 id: e52a8096f8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいたろー！(プロフ) - 国木田くん推しててよかった (11月28日 23時) (レス) @page1 id: 09168e2c17 (このIDを非表示/違反報告)
snow?(プロフ) - めっさ好き。続き楽しみ。アイラブヤンデレ。アイラブ文豪。（語彙力とは） (11月24日 0時) (レス) id: 6393b502b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：霞草 | 作成日時：2023年11月23日 23時
