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彼女は、未だに起きない。
どれくらい本を読み込んで。寝る時間が遅くなったのか。
机上には五冊程の本が積まれていて、どれも軽く五百頁は超えている。
彼女は、机に対して真っ直ぐ座っておらず、椅子を何故か横向きにして寝ていた。思わず彼女の視線を辿ってみると、ミレーの｢オフィーリア｣の複製画が飾られていた。
彼女はその絵画を見つめながら、眠りに落ちていったのだろう。
不意に彼女の方へ、向き直ると丁度顔を支えていた肘が崩れ落ちる。
｢おっと……｣
咄嗟の判断で顔に手を添えて、衝撃を和らげて上げると、顔に違和感を感じたのか長い睫毛がゆっくりと持ち上がった。
｢…………じつい……？｣
顔に添えていた手を軽く握られ、名前を呼ばれる。寝起きだからか、上手く舌が回っていない。
｢おはようございます。……部屋に戻らずここで寝るなんて、｣
｢……昨日のことは憶えていないわ｣
少し、視線を下向きに彼女は応える。
悪気が無いことは分かったが、彼女は女性だ。体を冷やすなんて駄目だ。ちゃんとした場所で寝ないと風邪をひくことがあるかもしれない。
｢春ですけど意外と夜は冷えますからね｣
｢上着を着てるからだいじょ、｣
｢いいですか？ちゃーんと！自室で寝るように｣
｢……ぜんしょする｣
大丈夫なんていう前に、今度は左手も使って彼女の頬を軽く抓る。
こうでもしないと彼女は言う事を聞かないから、これは便利である。
話が変わってしまうが、彼女は本当に憎たらしいほど顔が整っている。
近くに寄れば寄るほど、引き込まれていくような感覚にとらわれて仕舞いそうになる。
｢実井、近い｣
｢……あぁ、すみません。つい｣
彼女の一言を聞かなければ、彼女の顔を両手に添えたままもっと顔が近づく所だった。
勢い余って、もしかしたら。なんてことがあったかもしれない。
｢もしかして見蕩れてた？｣
｢……貴女ってそういう所、三好さんに似てますよ｣
｢言っとくけど、自己愛者ではないから｣
｢ははっ、よく言いますね｣
半ば、引っ張るように両腕を掴み、彼女を立ち上がらせる。
ほら、早く食堂に行かないと。波多野に朝食食べられてるかも。
そうやって、追い込むと福本さんのご飯……！と悲鳴を上げ、逆に僕を引っ張り始める。
本当はね、見蕩れてたんですよね。なんて聞こえないように呟いたのに、彼女は振り返って、にこりと愛想良く僕を笑った。
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結花(プロフ) - そらさん» コメントありがとうございます！そういってくださるなんてとても嬉しいです！更新頑張りたいと思います！ (2016年5月11日 23時) (
レス) id: e4f52b721c (このIDを非表示/違反報告)
そら - お話とっても面白いです！更新頑張ってくださいね！ (2016年5月9日 22時) (レス) id: bddda4b7cc (このIDを非表示/違反報告)
結花(プロフ) - かみつれさん» コメントありがとうございます！！ 面白いだなんて凄く嬉しいです！更新頑張りたいと思います！ (2016年5月3日 19時) (レス) id: e4f52b721c (このIDを非表示/違反報告)
かみつれ - 更新楽しみにしています！ (2016年5月3日 0時) (レス) id: 51c4bbe9fb (このIDを非表示/違反報告)
かみつれ - とても、面白いです！ (2016年5月3日 0時) (レス) id: 51c4bbe9fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：結花 | 作成日時：2016年4月22日 0時
