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最近見る夢は、かなり昔の記憶だ。
母はいつも品がよく、優しいひとだった。
桜の花びらが、雪のように舞う桜並木で母に手を引かれて歩いていた。少し前までは、建物は木で出来ていて和室があったのに、段々赤い煉瓦造りの建物が増えてきた。
そのせいか母の服装は珍しく、洋装で薄紅色のスカートを履いている。わたしも、今は洋装でワンピースというひとつに繋がった洋服を着せられていた。
春の気温は、心地好くてすぐに寝てしまいそうになる。
そのせいで緩くなる手に気づいたのか、母はわたしの方を見て、可笑しそうに笑う。でも母の表情は逆光でいつも見えないし、母の顔自体もう思い出せない。
可笑しい話だが本当だ。
わたしがうとうとするのを見兼ねてか、両脇に手を入れられ抱き上げられる。
｢眠いの？｣
｢うん……｣
｢でもね、ねむりたくない｣
｢……なんで？｣
舌足らずの言葉を吐き出すと、母は微笑んで、寝てもいいのよ。とわたしに囁く。
この時は、無性に眠かった。
瞼が押されるように、閉じていく程。
でも、寝てしまったら彼女は。
｢おかあさん、ひとりになっちゃうから、｣
そうやって、瞼を擦りながら答えると母はまた笑って、わたしの頭を愛しそうに撫でた。
わたしが右肩に手を置くと、母は少し痛そうな顔をする。
｢お母さんはね、ひとりになんかならないわ。貴女がいるから。だから、おやすみなさい｣
ゆっくり、言い聞かせるように耳元で囁かれる。
頬を少し冷たい手で撫でられると、瞼が不思議な程ゆっくり落ちていく。
母の胸に体を預ければ、意識が海の底に沈んでいった。
＊
場面は打って変わって父の書斎に変わった。
母の悲鳴が、聞こえる。
廊下まで漏れ出す悲鳴に、何事かと思い父の書斎の扉をノックした。
入っていいよ。という声は聞こえず代わりに父の姿が現れた。その時の父の姿は軍服で、胸に沢山の勲章が付けられていた。きっと高級将校の中のひとりだったのだろう。
父は、わたしの姿を見るとわたしを軽々と抱き上げた。
｢どうしたんだい？｣
目線を合わせて、優しく訊いてくれる。
｢おかあさん、どうしたの？｣
｢大丈夫だよ。花瓶を割ってしまっただけなんだ｣
そう言って苦笑いすると、扉を少し開けて中の様子を見せてくれた。
お母さんが、悪戯っぽく笑う。
本当はそんなことじゃないって分かってたのに、子供は無力で素直さが残酷だ。
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結花(プロフ) - そらさん» コメントありがとうございます！そういってくださるなんてとても嬉しいです！更新頑張りたいと思います！ (2016年5月11日 23時) (
レス) id: e4f52b721c (このIDを非表示/違反報告)
そら - お話とっても面白いです！更新頑張ってくださいね！ (2016年5月9日 22時) (レス) id: bddda4b7cc (このIDを非表示/違反報告)
結花(プロフ) - かみつれさん» コメントありがとうございます！！ 面白いだなんて凄く嬉しいです！更新頑張りたいと思います！ (2016年5月3日 19時) (レス) id: e4f52b721c (このIDを非表示/違反報告)
かみつれ - 更新楽しみにしています！ (2016年5月3日 0時) (レス) id: 51c4bbe9fb (このIDを非表示/違反報告)
かみつれ - とても、面白いです！ (2016年5月3日 0時) (レス) id: 51c4bbe9fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：結花 | 作成日時：2016年4月22日 0時
